賽は投げられた | ナノ
結局、悪魔を見つけたのはヒューイで、待てと言う前にパクリと悪魔を食べてしまった。思わず力一杯殴ってしまった。
「何をする!」
「ヒューイこそなにしてんのさ!」
「悪魔を食べただけじゃろうが!」
「何の為に祓魔師の方々が来たと思ってるの!」
「悪魔が退治できたんじゃし良いじゃろう」
この馬鹿犬めと叫びそうになったところで、私とヒューイの間に獅郎さんが現れた。肺に入っている空気を出すように、大きな溜め息を吐いた。
「まぁまぁ、良いじゃねぇか。気楽に考えようぜ。な、ゆいちゃん」
「・・・すみません。私がもっと躾けておけば」
「躾けるとはなんじゃ!」
「あぁもううるさい!帰れヒューイ!」
ぼふん、と音をしてヒューイは私の中に消えた。悪魔祓いをする為に来ていた祓魔師の人たちに謝ろうと向き合ったら、みんなポカーンとしていた。えっと、どうしたらいいんだろうか。困って獅郎さんを見れば笑っていた。
「さて、帰るか!」
ニカッと笑って獅郎さんが言ったら、みんなハッとしたような顔をして来た道を戻ろうと後ろを向いた。
「あの!・・・すみませんでした」
「なんでゆいちゃんが謝るんだ?」
「だって、ヒューイが」
「まぁまぁ細かい事は気にすんな!俺たちも楽できたんだしよ」
ガシガシと遠慮なく頭をなでまわしながら獅郎さんが言えば、周りからも同意するような声がちらほらと聞こえた。ホッとしながら帰る為に元来た道を引き返す。やっぱり隣には雪男くんだった。
「凄いんですね、犬神って」
「え?あー・・・そうかな?」
「だって悪魔を一口って、考えた事もなかったよ」
雪男くんは口元に手を当てながらクスクスと笑った。そんな姿を横目に見ながら、少しずつ明るくなってきた道を歩いた。
「今日はありがとな」
「いえ、お役に立てて良かったです」
「また何かあったら頼んだぞ」
「あはは、わかりました」
「ほら雪男も挨拶しとけ」
「え?ちょ、神父さん!」
獅郎さんにグイグイと背中を押されて雪男くんが私の前に出てきた。
「えっと、あの、」
しどろもどろな雪男くんが、なんかおかしくてついつい笑ってしまえば雪男くんは少しだけ頬を赤くした。
「また、会えると良いですね」
「・・・会えるよ」
「・・・そうですね。ではゆいさん、また今度」
ニコリと笑って、雪男くんは祓魔師の方々と帰っていった。また、会えるだろうか。
小さな願い
(どうかまた、会えますように)