賽は投げられた | ナノ

 

先頭を歩くヒューイに続いて獅郎さん、祓魔師さんたちがぞろぞろと歩く中、私はなぜか雪男くんと二人で最後尾を歩いてます。しかし何かを話すわけでもなく、無言。なにこれ超辛いんですけど。

「・・・あの、雪男くんってさ」

「なんでしょうか」

「・・・なんで祓魔師になったの?」

とりあえず当たり障りのない質問をしようと思ったのだが、どうやら雪男くんにとっては聞かれたくなかったのか、微かに眉間にしわが寄った。先程にも増して嫌な沈黙が続くと思われたが、雪男くんが小さな声で喋りだした。

「小さい頃から、悪魔が見えてたので」

「・・・そっか。私と同じだ」

「え?」

「いやぁ、私もさ、生まれたときから見えてるんだよね」

「・・・そうなんですか」

「犬神様の器っていうか、そういうもんになるからさ、悪魔が見えないとやっていけないんだよね」

あははと笑ってみるものの、雪男くんからは沈黙しか返ってこない。ヤバイ話題ミスったかなーなんて思ってたら、急に雪男くんが立ち止まった。私も二歩踏み出したところで止まって振り向いてみたら、なんとも言い表せないような表情をした雪男くんがいた。

「・・・高村さんも大変だったんですね」

「んー・・・大変、って思うかな?」

「違うんですか?」

スタスタと歩き始めた雪男くんに合わせるようにして隣を歩く。

「私の家族がそうだったから、他の子もこんな感じなのかと思ってた。あ、私の事はゆいって呼んでよ。高村だと祓魔師には沢山いるし」

「・・・分かりました」

そう言うと雪男くんがクスリと笑ったような気がした。だって、あんな山奥で同い年の子供と遊ぶ事なんてなかったから。あの生活が普通だと認識して、違うと知ったのは小学生になってからだった。スパルタな両親から幼い頃から勉強を叩き込まれ、銃の扱いが出来るようにと毎日筋トレをしたり・・・今思い返せば我ながらそれに耐えたのは凄いと思う。
ガサガサとみんなが歩いて出来た道を進んでいたら、風に乗って悪魔の臭いがしてきた。しかも腐敗臭のような臭いも混ざっているので、屍(グール)か屍番犬(ナベリウス)か屍人(ゾンビ)・・・は流石にないか。結構近くに居るのか、はたまた近づいて来ているのか。ヒューイも気づいてるはずなのに何も言わないということは、私でも対処できるレベルと言うわけで。小さく息を吐くと、隣を歩いていた雪男くんが不思議そうな顔をした。両手を合わせて呟くようにしてハンドガンを出す。

「今のって、」

「企業秘密ってことで」

雪男くんが何か言いたげだったが、雪男くんの近くの草むらがガサッと大きな音を立てた。そこから出てきたのは犬型の屍(グール)だ。バッと銃を構えて私が発砲するのと同時ぐらいに、雪男くんも屍に向かって発砲した。雪男くんも竜騎士の称号を持ってるのか。なかなかの反射神経だなーなんてのん気に思ってたら、雪男くんに睨まれた。え、私何かしたっけ?

「なんで気づいてたのなら言わないんですか!」

「え、いや、私だけでも平気だし」

「っ、だとしても、周りに危害があったらどうするんですか!」

「え、あ、その、」

「・・・これから何かあったらちゃんと言ってください」

「わ、かりました」

怒った雪男くんは迫力が凄かったです。これからは雪男くんを怒らせないように注意したいと思いました。

祓魔師さんたちが追っていた悪魔ではなかったので、またヒューイを先頭に歩き出した。私たちはまた、最後尾を歩いています。



二人の共通点は
(子供の頃から悪魔が見えて、竜騎士だなんて)


 

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