賽は投げられた | ナノ

 

朝っぱらから鳴り響く家の電話。因みに現在の時刻、早朝4時27分。家の中には私一人しか居なくて、必然的に電話に出なければいけない。今にもくっつきそうになる目蓋を必死で開いて、電話に出る。

「はい、高村です」

「お、その声はゆいちゃんか?」

「・・・はぁ、そうですけど」

「俺だよ俺!」

「・・・あいにく詐欺には引っかかりませんよ」

眠たい頭を覚醒へと導きながら、ぼそぼそと喋る。すると受話器越しから笑い声が聞こえてきた。あれ、もしかしてこの声って。

「獅郎さん?」

「おう、おはよう!」

「まだ4時半頃なんですけど」

「まぁまぁそう言うなって。ところでご両親は」

「二人なら任務で居ないですよ」

少しの沈黙の後、困ったなぁと呟いた声が聞こえてきた。もしかしたら何か急な任務が入ったりしたのだろうか。でもそれなら二人の携帯にでも電話すれば良いだけの話・・・チャラララッチャラー・・・。二人とも、携帯置いていってるし・・・!

「あー、獅郎さん?」

「あ、悪いな」

「私で手伝える事があれば手伝いますよ」

「お!それは助かる」

「着替えてくるので「おーい!早くしろよー!」・・・」

言い終わる前に、玄関から獅郎さんの声が聞こえた。ちくしょう、私に手伝わせる気で準備していたな・・・!部屋に戻り急いで動きやすい服装に着替えてから、獅郎さんが待っている玄関へ急ぐ。

「っと、そうだ。田中さん、カモーン!」

「“はいはい、なんですか?”」

「ちょっと出てくるから家番よろしく」

「“仕方ありませんねぇ・・・無茶しないように”」

「はーい」

よし、田中さんに任せておけば家はきっと大丈夫だろう。サクラちゃんじゃ不安だしクロウだと家を破壊しかねないし。田中さんは玄関まで見送りに来てくれた。なんて出来た狛犬なんだろうか。

「おー、悪いな」

「今度何か奢ってくださいね」

「まぁ、そう言うなよ。今日は俺の息子の任務でもあるんだ」

寝癖ついてるぞ、と言って髪を撫でられる。そういえば、獅郎さんって二人の息子が居るんだっけ?また今度詳しく聞いてみよう。

「じゃあ、田中さん行ってきます!」

「“いってらっしゃい”」

わしゃわしゃと少し力を込めて田中さんを撫でてから、家を出た。もちろん獅郎さんの鍵を使っているので、任務がある場所の近くに出るのだが。


頼られる
(高村家の人間として、恥じぬように)


 

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