賽は投げられた | ナノ

 

「初めて会った頃はあんなに可愛かったのに」

「はいはい、可愛くなくてすみませんね」

来た道・・・と言っても若干人が通ったようになっているだけで、また茂みをかき分けながら進まないといけないが、その道を辿って家を目指す。もちろん先頭は私で後ろにメフィストが居る。

「あれはゆいさんがまだ小学校・・・1年の頃、でしたかな」

「・・・」

今の私から見てみれば、小学生低学年の頃の私なんておぞましい。怖いもの知らずというか、単純馬鹿というか。




あの日も、学校から帰ってきたときだった。家の中から悪魔の臭いがしたのだ。ただ事じゃないと思って、ヒューイとクロウを呼び出し、家に乗り込んだ。両手にはもちろん銃を持って。
悪魔の臭いは居間からしていて、ドアを開けたと同時に銃を構えた。

「・・・ゆい?」

居間には驚いた顔のお父さんとお母さん、蓮お兄ちゃんと、見知らぬ顔の人が居た。その見知らぬ人から、悪魔の臭いがしてくる。もうわけがわからなくなって、どうしたら良いのかわからなくなって、とりあえず発砲した。

「ゆい!」

「んがっ!」

ゴンッという音がして、私は脳天をお父さんに殴られたのだと理解した。だってめっちゃ痛い。あまりの痛さにうずくまると、お母さんがクスクスと笑い出した。

「ゆいはメフィストさんに会うのは初めてだったわね」

「・・・めふぃすと?」

この場で知らない名前の人など一人しか居なくて、自然と先程発砲した方へ視線を向ける。ニコリと笑っているメフィストさんが居た。

「・・・ごめんなさい」

「イエ、お気になさらず。知らなかったんですから、仕方ありません」

「めふぃすとさん・・・!」


その後、メフィストは優しいと勘違いしてしまった馬鹿な私は、メフィストが来る度に駆け寄っていったのだが・・・。


「幼女とは良いものですね☆」

「・・・ようじょ?」

まだ幼かった私がその事を理解したのは、数年後だった。それ以来、メフィストとは距離を置こうと思った。



やっと家に着いたと思ったら、メフィストはすぐに帰るといって、鍵を使って帰った。最後に、塾の鍵を投げ渡して。



好き?嫌い!
(ロリコン変態野郎でした)



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「あの時、ああ言わなければ、彼女は私に依存していたでしょうね。そして、私も・・・」

少しだけ悲しそうに笑ったメフィストを、誰も知らない。


 

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