賽は投げられた | ナノ
それじゃあ、帰りますねと言ってゆいちゃんは小屋から出ようと戸に手を伸ばした瞬間、戸が開いた。そこにいたのは坊と子猫と廉造で、戸を開けたのは坊だった。
「お前・・・!」
ゆいちゃんの顔を見た途端に、驚いた顔になる坊。明らかに顔見知りっぽい雰囲気だが、坊の眉間にはしわが寄っていてゆいちゃんは・・・特に変わりない。坊の後ろに居た子猫と廉造はゆいちゃんと会っていないのか、誰?という表情をしている。
「なんでお前がここにおるんや!」
「竜士、」
「和尚!」
「え、おとん?」
和尚が止めに入ったことで坊の視線はそちらへ向かった。ゆいちゃんは二人の顔を交互に見ている。
「和尚・・・なんでこいつと一緒におるんや!」
「こいつって・・・助けてあげたのに酷い言い草じゃないか」
「ちょい待ちぃ。助けたって、どういうことや?」
「っ、」
視線を下に向けて俯く坊と、その坊を見てやらかしたというような顔をしたゆいちゃん。坊は顔を上げず、ゆいちゃんの視線は右へ左へ上へ下へと明らかに動揺している。
「あー・・・悪魔に襲われそうだったのを、ちょっと」
ものすごく言い難そうに言葉を発したゆいちゃん。しかしそれよりも、出てきた言葉にその場の全員が驚いた。
「坊、悪魔に襲われたんどすか!?」
一番に反応したのは子猫で、それから廉造もわぁわぁと騒ぎ出した。
「・・・とりあえず、無事で良かったえ」
「柔造・・・」
ポンポンと坊の頭を叩けば、ゆっくりと顔が上にあがる。和尚とお父はゆいちゃんにお礼を言っていた。
「ところで、このかいらしい子誰どす?」
「こちらは高村家の娘さんで」
「高村 ゆい。小学4年」
「小4ってことは坊達と同い年なんやな」
「えっ」
「え?」
「・・・ガキ」
ゆいちゃんがボソッと呟いたのが坊に聞こえ、かすかに坊のこめかみが動いた。
「勝呂 竜士や。そんな事言う方がガキやろ」
「まぁまぁ、坊も落ち着いて。三輪 子猫丸いいます。よろしゅう」
「志摩 廉造や。ちなみにゆいちゃんのスリーサイぶふぅッ!」
「廉造ォ!女の子になんちゅうこと聞いてんのや!」
思いっきり廉造の頭を殴れば、その場にうずくまり痛みを耐えている。今度きっついお灸据えなあかんな、なんて考えながらゆいちゃんを見たら、ものすごく引いたようで冷めた目で廉造を見ていた。
「堪忍え」
「なんでじゅーぞーが謝るんですか」
「廉造は俺の弟やさかい」
「えっ」
ゆいちゃんは俺と廉造の顔を交互に見やり、なぜかへらりと笑った。
実は同い年
(・・・最初から喧嘩腰すぎるやろ)