短編 | ナノ
私は周りに流されないタイプだと思う。だって噂とか全然興味ないし、誰かと一緒に居ないと何も出来ないなんてことはない。私の親友は所謂ミーハーで、私に興味がなくてもずっとテニス部の事を話している。今もまた然り。
「あっ!」
「どした?」
「あれだよ、柳生くんに仁王くん!」
「ふーん」
「ふーんって・・・それだけ?!」
窓の外に視線を向ければ茶髪と銀髪の二人が歩いている最中だった。体育でもあったのか。まあ私には関わる気もないから関係ないんだけど。
というのが先週の事。現在私の手に握られているのは、“柳生”と書かれた英語のノート。ちらっと中身を見せてもらった(故意で見たわけじゃなくて、手が滑って落ちた時に開いた)のだが、もの凄く分かりやすくまとめてあった。ぶっちゃけ借りたいくらいだ。
「・・・てか柳生ってどっち?」
親友に教えて貰ったのは柳生と仁王。おそらくどちらかが柳生なのだが・・・まぁ、会ったほうで良いか。多分仲が良いと思う、憶測だけれど。どっちか片方に渡せば柳生の手元に戻るだろう。
スタスタと廊下を歩いていたら、前方に銀髪が揺らめいていた。
「あのー、」
「・・・なんじゃ」
「柳生ってアンタ?」
「俺は仁王ぜよ」
「あっそ。じゃあ、これ。廊下に落ちてたから」
軽く押し付けるように渡せば、渋々と受け取ってくれた。てかこっちは仁王だったのか。
「柳生のノートじゃな」
「それじゃ、よろしく」
「待ちんしゃい」
「・・・なに」
もう帰ろうと思っていたのに、何故か右手首をつかまれた。正直面倒。良かった事と言えば今は放課後で生徒があまり居ないことだ。だって居たら絶対にうるさいし。
「俺の事、知らんのか?」
「仁王でしょ?さっき自分で名前言ったじゃん」
「ククッ・・・面白いな、お前」
「お前って、止めてくれない?苗字 名前よ」
「苗字、これからよろしくのぅ」
「い・や・だ。それじゃ」
今度こそ仁王から離れて、家路に着いた。その時、仁王が笑っていた事なんて、私が知るはずない。
(なんか仁王先輩、機嫌良いっスね)
(気持ち悪いくらいにな。仁王ー、なんかあったのかよぃ!)
(・・・何もなかよ)
end.
title 207β
呼んだ名前を間違えた