短編 | ナノ

 
苗字 名前。立海3年B組、席は俺の前。成績優秀、眉目秀麗、高嶺の花として立海中に名が知れ渡っている女子。そんな彼女と仲が良い俺は、いつも休み時間などは話していた。今だってそう、後ろを向いてくる彼女の仕草一つ一つに魅かれてる。

「ねぇ、ブン太」

「・・・なんだよぃ」

「私、彼氏と別れた」

「はぁ?!」

「ちょ、声大きいって!」

さらりと喋った名前の言葉に俺のほうが声を荒げたら、口元を手で覆われた。だって、コイツ彼氏と昨日まで仲良かったんじゃねぇの?

「昨日さ、浮気現場目撃しちゃったんだよね」

「・・・は?」

「だから、別れた」

いやいやいや、目撃したって・・・なんでこんな軽く言えるんだよ。彼氏と別れたら普通寂しいとか悲しいとか思うんじゃねぇの、女って。

「・・・寂しくねぇの?」

「さあ、どうだろうね」

「じゃあさ、俺と付き合う?」

そう言ってみれば目を見開いて驚いた表情になった。あんまこの顔見たことねぇな。でもすぐに表情は困ったような顔になった。

「君じゃ替わりにならないよ」

「・・・そうかよぃ」

結構本気で名前のことが好きなんだけどな。悲しそうに呟いた名前の顔は、眉が下がり今にも泣きそうな顔をしていた。そんな顔が見たかったわけじゃなかったのに。

「俺、諦めねぇから。覚悟しとけよ?」

ニッと笑って言ってみせれば、目を見開いたあといつもより少し影が残っていたが笑った。


end.
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君じゃ替わりにならないよ 

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