短編 | ナノ
――ザァアアア・・・
久しぶりの休みにちょっと遠くまで買い物に行ったらこの有様。雨は横から殴りつけるように降っている。ホント、私神様に何かしたか?
バシャバシャと傘も持ってないので雨に打たれながら家まで走る。1分と経たない内に全身びしょ濡れになった私は、急いで走ってようやくマンションに着いた。鍵でドアを開けて、すぐにお風呂に入ろうって考えながら部屋の中へ。
「・・・」
肩から鞄がスルリと抜け落ちるのも気にならないくらい、目の前の光景が信じられなかった。いや、確かに雨は凄い降ってたけどさ、
「部屋が、びしょ濡れ・・・」
ハッとしてとりあえず窓を全部閉める。が、この惨状が変わるわけでもなく。何も考えたくなくて、私はお風呂に向かった。
お風呂から上がってすっきりした頃から、雷が凄い鳴っている。もう何も考えたくない。
部屋の中を見回してみればなぜかマイ枕だけは濡れていなかったから、それを持ち部屋を出た。向かう先は、マンション3階。
――ピンポーン・・ピンポーピンポピンポーン
「やかましぃわ!」
「やっほ、柔造」
「名前・・・なにしてん?」
「いやぁ、とりあえず上がらせてくれよ」
「はぁ?って、ちょ、待ちぃ!」
ズカズカと上がり込んじまえばこっちのもんよ。相変わらず微妙な散らかり具合の部屋に無理矢理入り込めば、後ろから盛大な溜め息が聞こえてきた。
「名前、その枕なんや」
「あー、今日泊まろう思って」
「はぁ!?」
「私の部屋びしょ濡れになっちゃってさー。頼む!」
「ふざけんなや」
「私と柔造の仲じゃん」
「・・・」
沈黙が痛い。だって仕方ないじゃないか、部屋があんな状態で寝れるわけないし。
「・・・今回だけやぞ」
「柔造ならそう言ってくれると思ったよ」
いそいそとテレビに繋いであるゲームを起動させれば、頭を後ろからポカンと殴られた。しかし手加減してくれているんだろうが、手加減しすぎて全然痛くない。
「ふへ、」
「なにいきなし笑ってん。気持ち悪い」
「酷い!」
その日はぎゃあぎゃあと騒ぎながら夜が明けていった。
大雨注意報
「たまにはこんな日も良いね」
「俺、男やけど」
「・・・あっはっは」
end.
大雨注意報