短編 | ナノ
「奥村せんせー!」
「苗字さん。どうかしましたか?」
「今日の授業で解らないところがあったんですけど…今、大丈夫ですか?」
「えぇ、構いませんよ」
にこりと薄暗い廊下で奥村先生は笑った。近くの空き教室をちょこっと借りて、解らない場所を授業より丁寧に教えてもらう。
5分も経たない内に奥村先生の携帯が鳴った。内容を聞くわけにもいかないが、誰もいない教室で話されれば嫌でも聞かれるってわけで。
「すみません、悪魔が出たみたいなので」
「わかりました。気をつけてくださいね!」
「はい」
奥村先生はすぐに教室を飛び出して行った。
私なんて授業でもわからないことばかりなのに、奥村先生はスゴいな…。
でも、いつか絶対追いついてみせるんだから!
「よし、そうと決まれば頑張るぞー!」
誰もいない教室の中に、私の声が響いた。
end.
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追いつけない背中