短編 | ナノ

 
屋上でサボるのなんて当たり前で、今日も朝から屋上の人目につかないところでごろりと横になっていた。授業をサボって屋上に来る人なんて滅多に居ないし、第一サボる人自体が少ない。そんな中、私は毎日のようにサボっているから先生達からも生徒達からも評判が悪い。特に気にしないけど。


「・・・ん、」

いつの間か寝てたのか・・・。上体を起こして伸びをしようと思っていたら、何かがパサリと足に落ちた。視線を下に向ければそれは誰かのブレザーで、寝ていた私にかけられたものだと推測できる。物好きも居たものだ、と思いながら名前を探せば「仁王 雅治」と書かれていた。誰だ、コイツ。ギィッと音がして、ゆっくりとした足音が私の方へ向かってくるのが聞こえる。

「お、起きたんじゃな」

「・・・誰」

「おまん、俺のこと知らんと?」

「はあ?」

現れたのは銀色の髪をした男。不良かよ、なんて思ったけど、なんとなく違うような気がする。目の前のコイツはまだ春先のこの時期、シャツだけじゃ寒いだろうにブレザーを着ていない。

「もしかして、これアンタの?」

「そうじゃ。仁王 雅治、好きに呼びんしゃい」

くつくつと笑うそいつにブレザーを投げて渡せばしっかりとキャッチした。携帯を見て時計を確認すれば丁度4時間目の途中の時間で、それなのにここに居るコイツはサボりなのだろうか。まあ、私には関係ないことだけど。

「なあ、お前さん名前は?」

「・・・なんでアンタに教えないといけないわけ?」

「俺は名乗ったんじゃき、おまんも名乗るのが礼儀じゃなか?」

「勝手に名乗ったくせに。苗字」

「・・・下の名前は?」

「うぜぇ、」

面倒になってギロリと睨めば怖い怖いと思っても無い事を言って笑っていた。屋上を出ようと思って立ち上がれば、つかまれる腕。

「・・・なに」

「名前、教えてくれんかのう?」

「名前、苗字 名前だ」

「名前ちゃんか。どこ行くんじゃ?」

「帰るんだよ、ばーか」

滅多にしない満面の笑みで、私は右手の親指を下に向けた。さてと、これからどこに行こうかな。



(ッ、反則、じゃろ・・・)

次の日から、屋上には仁王の姿が多くなったとか、ならなかったとか。


end.
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満面の笑みで親指を下に 

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