短編 | ナノ
どどどどどうしようどうしようどうしようどうしよう…!
生徒会室に佇む私の足元には割れた花瓶がある。水も入っていたから床の絨毯もびしょ濡れだ。
ヤバい、確実にヤバい。
なんたってここは生徒会室。跡部様の私物ばかりの部屋なのだ。この割れた花瓶だって、跡部様が持ってきて毎朝花を置くようにと言われたし、絨毯だって跡部様の私物だ。つまり、めちゃくちゃ高い。もし弁償しろなんて言われたらとんでもないが出来ない。
私も多少は金持ちの部類に入るのかもしれないが跡部様に比べたら雲泥の差だ。
「――っ、どうしよう…!」
「何がどうしようなんだ?」
背後から聞こえた声に、ギギギ…と音が鳴るような感じで振り返る。声で解っていたが、出来れば似た人かなー、なんて幻想を抱いたりして。
「はは、おはようございます。跡部様」
「ドアの前に突っ立ってなにやってやがる」
「えーっと…あはは、っ、申し訳ありません!」
「…アーン?」
深々と頭を下げたら、訝しげな声が頭上から聞こえる。そりゃそうだ、私だっていきなり謝られたら意味がわからないもん。
「…これの事言ってんのか?」
「危ないです!私が片付けますから!」
割れた花瓶の欠片を拾う跡部様に血の気が引く思いだった。もしこれで跡部様が怪我なんかされたら堪ったもんじゃない。
私の必死の説得のおかげか、片付けようとしていた跡部様の手が止まる。急いで箒とちり取りで破片を集める。
「本当にごめんなさい!」
「気にするな。花瓶くらいまた買えばいい」
「じゃ、じゃあ弁償を…」
「出来るのか?アーン?」
「……出来ません。でも、」
「俺が気にするなと言ってるんだ、黙って従え。良いな」
「うっ…でも、割ってしまったのは私ですし」
「そこまで言うなら、あとの学校生活は俺の雑用をしてもらう。良いだろ、アーン?」
「え、ちょ…」
「じゃあな。授業に遅れるなよ」
「え、あ、跡部様!?」
かっこよく去っていった跡部様の背中を見ながら、頭は今の出来事を理解できずに停止。
まあきっと、結果オーライえ、結果オーライ…なの?
end.
title 電子レンジ
まあきっと、結果オーライ