短編 | ナノ

 
空は青く澄み渡っているのに、私の前に立ち塞がる彼のせいで私の目の前は真っ暗だ。黒い、黒すぎるよ幸村くん・・・!

「誰が黒いって?」

「・・・あはは」

にこりとそれはもう美しい笑顔を見せるのは私の彼氏の幸村くん。テニス部部長で儚くてかっこいいと言われ学校ではそれはもう大人気の彼。だけど、容姿に騙されちゃあいけないんだなこれが。

「名前、俺の話しちゃんと聞いてる?」

「はい、聞いてます」

「じゃあ覚悟、出来てるよね」

「はは、ちょっと待って、まだ心の準備が・・・!」

「やだなぁ、俺が待つわけ無いじゃん」

「ちょっ、ぎゃああああああ!!」

頭をぐりぐりとされる。これマジで超痛いんだってば!笑顔でこれをしてくる幸村くんは相当のドSだと思う。だって私痛がってるのに凄く楽しそうなんだもん!

「反省した?」

「もっちろん!」

「じゃあもうしない?」

「いえす!」

ビシッと親指を立てたらあらぬ方向へ曲げられそうになってストップストップと叫べば渋々といった感じで止めてくれた。彼女の指折ろうとするなんてどんなドメスティックバイオレンスだ。しかもたかがプリン食べたくらいでこんなに怒らなくても良いじゃんかよ!こんな毎日をこれからも過ごしていくと思うと、少しだけ泣きそうになった。

「名前、立てる?」

「・・・、うん」

そう言って手を差し伸べてくれた幸村くん。やっぱこの生活、良いかもしれない。


end.
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こちら地獄の3丁目 

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