短編 | ナノ
その日はいつも以上に夏日で、暑さに弱い俺にとっては最悪な日だった。
「…(あっつ…)」
土曜日で学校は休みだけど部活があるから学校へ行ったものの、全員暑すぎるせいかやる気が見られない。そんな部員達の状態を見た幸村が、「今日の部活は午前中まで」と言って予定を変えた。
そして今。学校から家までの道のりを歩いているが、なんせ昼過ぎのせいで影が全くと言って良いほどない。
「…(ダメじゃ、倒れそう)」
ふらふらと覚束ない足で歩いていたが、一瞬の内に倒れてしまった。記憶も、そこで途切れた。
「…(はず、なんじゃが)」
気がつけばどこかのソファに横になっていた。冷房が効いた、涼しい部屋。上半身だけ起き上がらせて周囲を見るも、黒と白のシックなデザインのものが必要最低限置いてあるだけの、殺風景な部屋だった。
「…(倒れてたのを、拾ってくれたんか?)」
これからどうしようかと考えていたら、玄関のドアが開く音が耳に入った。どうやら部屋の主が帰ってきたらしい。足音はそのまま、仁王の居るリビングへ向かい、なんの躊躇いもなくドアが開いた。
「あ、起きたんだ」
「…名前ちゃん?!」
「アイス買ってきたけど、食べる?」
ドアを開けて入ってきたのは、同じクラスの苗字 名前ちゃん。仁王の想い人である。
はい、と手渡されたのはシャリシャリちゃんのアイス。袋をビリッと開けて中からアイスを取りだしかじりつく。キーン、と頭が冷えて、仁王の頭も回りだす。
「なんで、ここに名前ちゃんが居るんじゃ?」
「なんでって…」
ここあたしん家だから(…え、)
(全く…家の前で倒れるなっての)
(え、え、)
(…まだ具合悪いのか?)
(いや、大丈夫なり)
(そっか。まぁ日が暮れるまで待てば?また倒れられても後味悪いし)
(!!(名前ちゃんが心配してくれとる…!))
end.
title パッツン少女の初恋
ここあたしん家だから