ネタ帳 | ナノ


もし来世があるとしたら、楽に生きたい。

そう願ったのは間違いなく私。だけどこの仕打ちはあんまりじゃないですか。

「ワンワン!」

「キャゥン」

「ミャァウ」

絶え間なく動物の鳴き声がするココは、いわゆるペットショップで、現在私も檻の中。チラリと見えた鏡に映った私の姿はあろうことかゴールデンレトリバー。しかもなかなかに成長しているせいで値段もやや下がり気味。・・・なんとなく悲しい。ぼんやりと外の道路を眺めていたら、窓の前を通り過ぎる少年と目が合う。目と目で通じ合うー、なんてこともなく、少年は友達と歩いて行ってしまった。まあもしかしたらこれは夢なのかもしれない。ということで、おやすみ。





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まあ、そうですよね。夢なんかじゃありませんよね。考えるに、私が犬に転生したってことなのか?いや、それにしてはまた微妙な大きさで転生しちゃったよね。普通生まれ変わるのって赤ん坊とかからじゃないの?

「ママー、あのわんわんが良い!」

高い子供の声が聞こえ、顔を向ければビシッと私を指している。そして母親の顔といったら、もの凄く嫌そうな顔をしている。失礼なやつだなオイ。

「みっちゃん、もう少し小さな子にしない?」

「えぇー・・・でも、あの子も飼われたがってるよ!」

「・・・そうねぇ。すみません、触らせてもらっても良いですか?」

「はい、少々お待ち下さい」

ニコリと笑った店員は私の檻の鍵を開けると、女の子の元へ連れて行く。若干首が苦しい。女の子の前まで連れて行かれれば、お尻の方をポンポンと叩かれてやむを得ず座る。

「わんわんだぁ!」

一気にテンションが上がった女の子が私に触れようとした。

「ワンッ!」

女の子には悪いが、どうしてもこの子の家で飼われたくなくて、少し力強く鳴いた。すると見る見るうちに女の子の目には涙が溜まり、ついには泣き出してしまった。あれ、これって私が悪いのか!?どうしようかとおろおろとしていたら、女の子の母親が宥め始めたので、私は檻へ逆戻り。ここ狭いから嫌いなんだよね。本日最初の溜め息がこぼれた瞬間だった。

「ふっ、人間臭いな」

下げていた顔を上げれば、檻の前にはいつぞやの目が合った少年が立っていた。何故ここに居るのか、なんて私には知る由がないので思わず首を傾げたら、クスクスとした笑い声が返ってきた。

「お前は面白いな。・・・また来よう。今日は時間がないんだ」

ポスポスと頭を撫でてから、少年は出て行った。


それから数日後に、私はこのペットショップを後にすることを、今の私はまだ知らない。


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