ネタ帳 | ナノ
呆気ない最後だった。足を踏み外して階段から落下。打ち所が悪かったのか頭はズキズキと痛むし、薄っすらと開いた目からは床に広がる血が見えた。最も最悪な事は、ここはあまり人が通らない場所ということだろう。直感的に、死ぬんだと思った。もし生まれ変われたらこんなアホみたいな死に方はしたくないな、なんて。
うん、それが気づいたら幼女ってどういうことだおい。
窓ガラスに映った姿はどう考えても6・7歳くらいの女の子。私が動けばその子も鏡のように動くから、恐らく私の姿なんだろう。一体どういうことだ。誰か説明してくれ。呆然と佇む私の視界に、チラリと人が映った。パッとそっちを見たら、綺麗な黒髪の女の子が私をジッと見ていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・?」
特に何も話すことはなく、私が首を傾げた瞬間、今まで合っていた視線が下へ向いた。おおい、なんだコレ。どういうことだコレ。というか、なんで女の子の首にあんな似合わないものがしてあるんだ。あ、れ・・・?もしかして、あれって、ワンピースに出てきた天竜人が奴隷につけていたものじゃないか?え、あ、え・・・?
「・・・あ、の」
「!」
私が声をかけただけで飛び跳ねる女の子の肩。待て待て、ちょっと待って。ゆっくりと顔を上げた女の子と目が合う。そこに映るのは、恐怖、動揺、諦め、全てが負の感情ばかりで、そして私がどういった人種なのかがようやく理解できた。
私、天竜人になったみたいです。
いや、まだここがワンピースの世界って決まったわけじゃないし。あ、もし女の子が奴隷だったとしたら、アレがあるんだろうか。まあ流石に聞けるわけないしなあ・・・。
「**!」
「!」
聞いた事のない名前のはずなのに、どういうわけか体が反応する。声のしたほうを見れば、それはもう、言ってはなんだがぶよぶよに太ってて気持ち悪い奴が、首輪に鎖を付けられた人を引き連れて歩いてきた。
「探したんだえ」
「・・・申し訳ありません」
小さな声で、ぶっちゃけ謝りたくないけど謝れば、そのまま男・・・といってもまだ子供なのだが、そいつは私の横を通り過ぎて行った。背中が見えなくなったと同時に溜め息を吐き出せば、近くに居た女の子が驚いたような顔をしていた。あー、ていうかさ、今の奴のせいで私が天竜人っていう可能性が確定に変わった。だってあのヘルメットしてたら、ねぇ・・・。
「えっと、貴方の名前は?」
「・・・え?」
「?」
「っ・・・、ハンコック」
ボソリと、小さな声で紡がれた名前に、私は鈍器で頭を打たれたような衝撃が走った。
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