ネタ帳 | ナノ


別段何かがあったわけではなく、気がつけば私はここに居た。それはもう、瞬きの一瞬だったと思う。

「お前、どこから入ってきやがった!」

「能力者か!?」

見るからに雑魚キャラのようなおっさん達が、私に向かって刀や銃口を向ける。いやいや、銃刀法違反だし。というか、ここどこ?太陽の光に当たってキラリと光る凶器に冷や汗を流しながら、どうしようかと視線を動かしていたら、これまたキモイおっさんと目が合う。ヒゲモジャモジャだし、なんか汚らしい。

「まあ、良い。次の島までは乗せててやるよ。玩具としてな」

ゲハハハハ、と下品に笑うヒゲモジャに続いて周りに居たおっさん達もこれまた下品な笑い声を上げる。玩具ってアレか、つまり夜のごにょごにょか。うわ、最悪じゃね?私死んだ方がマシじゃね?テンションガタ落ちなんですけど。

「夜になるまで牢屋にぶち込んでろ」

「へーい。おら、立て」

グイッと腕を掴まれ思わず鳥肌が全身に立ったが、それも気づかないのかおっさんは私を無理矢理立たせると船内へと続いているであろう扉を開けた。いや、まあこの扉が船内に続いてなかったらビックリするけどね。どんどんと奥の方へ、下の方へ。見えてきた鉄で出来た扉に、思わず生唾を飲み込んだ。

「おい、入れ」

そう言うや否や背中を押され少し前のめりで牢屋の中に入る。呆然と立ち尽くしていたら、不意に足に違和感。下へ視線を移せば、驚く事に足枷が付けられていた。しかもどう見ても簡単には動かないであろう鉄球が付いた足枷。その後すぐにおっさんは牢屋から出て行ったけど、私は一体どうしたらいいんだろうか。

「うーん、参った」

牢屋の中は狭くて、窓もない。あるのは扉に付けられた小さな小窓(柵付き)。そして私は今日一番の溜め息を吐き出した。


今が何時か、ここに入れられてから何時間経ったのかわからないが、先ほどから少し遠くの方で大きな音が何度も響いている。そしてこの揺れ。

「まさかの敵襲?それとも誰か助けてくれるのか・・・?」

いや、あまり過度な期待はしないことにしておこう。ていうかさ、この状況なら私逃げられたりするんじゃない?扉の方へ向かおうと足を一歩踏み出したら、ジャラリと音が鳴る。

「あ、コレあるから無理じゃね?」

左足に付けられた鉄球を見て愕然とした。どうにかこうにか持って行けないだろうかと考えて、とりあえず鉄球がどれくらいの重さなのか知る為に気合を入れて持ち上げる。

「・・・は?」

気合を入れたのにもかかわらず、鉄球は片手で楽々と持てる重さ。おいおい、見掛け倒しか。まあとりあえず第一関門は突破ということで。次はどうやってこの牢屋から出るか、だよね。この中からじゃ取っ手すらもない。

「体当たり、か。アレだね、なんか燃えるわー」

こんな状況下でなんだが、ちょっと楽しい。ほら、スーパーヒーローみたいな?扉の近くに鉄球を置いて、・・・あれ、おかしいな。この鉄球て見掛け倒しじゃないの?置いた瞬間ドスンという音とともに砂埃舞ったんだけど。・・・まあ良いか。

「うっし、やるぞー」

少しだけ助走をつけて、扉に体当たり。結構頑丈そうだから何回も当たらないと出られないかな、なんて思っていた私。あろう事か扉は一発で私とともに床に沈んだ。え、扉壊しちゃったよあははー。誰かに見られてたらマジ恥ずかしいなこれ。誰も居なくて良かった。

「・・・お前、」

「・・・?あ、」

不意に聞こえた人の声。やっべー、見られてたよ恥ずかしいなオイ。視線を移せば、白いツナギ(所々に血っぽいのが付いてるのはスルーの方向で)にキャスケット帽、サングラスをかけた男の人が驚いたような顔で見ていた。そして私と目が合えば、ハッとしてカチャリ、と銃口を私に向ける。え、なにこれやばくね?

「・・・お前、この船の奴か?」

「・・・違う」

「じゃあ、奴隷か?」

「・・・違う、と思う」

「・・・ああ、愛玩具か」

少し考えた後に男は納得したかのように呟いた。すると男はまだ床に寝そべっている私を上から下まで見る。あ、これ立ち上がって良いのかな?

「ちんちくりんだな」

「悪かったなこんちくしょう」

「ふーん・・・まあ、とりあえずキャプテンに報告だな。おい、ついて来い」

「えー」

「・・・死にたいのか?」

「はは、まさかー」

ギロリと睨まれれば私に拒否権なんて無いですよね、銃口も私に向いてるわけだし。どっこいしょと立ち上がった私に、婆かよなんてツッコミが入ったが気にしない気にしない。ジャラリ、と足に付けられた鎖が音を立てると、僅かだけど男の眉間にしわが寄った。

「チッ、これじゃ動けねぇのか」

チラリと鎖の先にある鉄球を見た男が舌打ちをする。

「あ、でもこれ見掛け倒しだから運べるよ?」

「はあ?」

「ほら」

片手でヒョイッと鉄球近くの鎖を持てば、簡単に浮かぶ鉄球。それを見た男はえ、と声を漏らしてから、俺にも持たせろと半ば強引に私の手から鎖を取る。

「うおっ!」

私から奪い取るのが早いか、鉄球が床に落ちるのが速いか。それくらいのタイミングで、鉄球は床にめり込んだ。

「テメェ、これのどこが見掛け倒しなんだよ!?」

「ええー」

私からしたら全然重くない。むしろ大人よりも断然軽いだろうそれは、どうやら重いらしい。男はまた舌打ちをしてから、私にその鉄球を持ってついて来いと口早に告げる。

どうやら私の逃避行は失敗に終わる・・・のか?










以下ネタバレ






主人公が居た世界とワンピースの世界では重力が違い、ワンピースの世界の方が軽い。その結果、主人公が馬鹿力みたくなる。後々は「強力の**」の異名を持つようになる。本人はもの凄く不服らしいが。そんな感じでわいわいがやがややれば良いな。


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