彼女は実に愚かだ

俺の言う通りにしていればよかったのだ




俺に全てを捧げ、俺の全てを愛し、俺以外をみなければよかったのに








『いやぁっ……!や、め……っ…ひぐぅ…!』


「どうした。この程度で音を上げるとは」


名前に馬乗りになり首に手をかけながら彼女を見下ろせば、苦しそうに歪んだ顔(あぁ今は俺だけしか見えていない!!)


『ぅぐっ……あ゙…ぁあ゙…』


愛らしい唇はいつもの小鳥の囀りのような愛らしい声とは違った、濁った意味のない言葉ばかり吐き出す

少し残念だが、また彼女の新たな一面を発見したような気がして嬉しくなった

本格的に苦しくなったのか、手足をバタつかせながら必死に抵抗しているが無駄だ

だって呼吸の自由は勿論手首も足首も縄で縛って自由を奪っておいたから


名前の口端からこぼれる唾液をみていると、まるで快感を享受しているときのように思えてくる


「……名前…!」

『あ゙…ゔ……くひ…』

「何故お前は俺を…!俺だけを見ない!!



「俺だけを見ていればこんな思いもせずに済んだというのに。ああお前は本当に……そんなに俺に嫉妬してほしかったのか!!だからミストレと笑っていたんだろう?!エスカバと手を繋いでいたのは!!答えろ!!」



答えられるわけがないというのに、俺は無意味な質問を投げかけた

さらに首を掴む力を強めれば、抵抗する力がなくなったらしく、最後の力を振り絞ったらしい白い腕が宙をかき、俺の頬にあたたかい掌が触れた


まさか最後にこんなことをされるとは思わなかったので、驚きに目を見開いた





『 ご め ん ね

 あ い、し て る』



声にならない微かな音を紡いで



彼女の動きがすべて止まった





「……名前……?」




首から手を離せば、起き上がってくれる

そう思ったのに彼女は起き上がらない

愛らしい唇を撫でても、指に甘い吐息がかからない


胸に手を当ててみても、生きている証の鼓動が、ない



「………あ、あ、あああ」



彼女は、名前は、




こんなにも綺麗に微笑んでいるのに



もう二度と俺をみてはくれない







君は明日も笑ってた


もっとはやく君を自由にしていれば