夏休み。
もうそろそろ学生たちが騒ぎ出す時期じゃないかと思う。私たち社会人からしてみれば普通に仕事で浮かれたりなんてことは決してない。私は。

「あ!九条さん今日どうですか?」
荷物をまとめて鞄に詰めていると事務の子(白井さんだったかな?)に話しかけられた。
「ん?」
「今晩結城さんや日高さんと呑みに行こうって話してたんですけど、」
「そうなの?でも今日はごめんなさいね。よかったらまた誘って」
「そうなんですか〜?残念です。今度またお誘いしますね。彼氏さんですか?」
「まさか。違うわよ。それじゃあお疲れ様」

肩に鞄をかけお疲れ様ですと声をかけ会社を出る。外はもうとっくに日もくれているのにもかかわらずじっとりと暑い。オフィスの中は冷房がすごく効いてるからあまり感じないけれどもう7月か、と思う。

ヒールを鳴らしながらオフィス街を歩く。白井さんに言われた彼氏とはつい先日別れたばかりである。私は生憎男運というものに恵まれていないみたいで、今回も浮気されてそれでお終い。そう今回もだ。
両親には早く結婚して欲しい。と急かされるし、周りの友人たちはだんだんと結婚していってるようでこの間も結婚式に呼ばれた。まだギリギリ6月!ジューンブライドだよ、と嬉しそうに報告してくれたのを思い出す。私だってできるなら結婚とかしたい。それに六月の花嫁だって憧れる。
いい出会いしよう!と思って上京したのが間違いだったのだろうか。地元に残った方が良かったのかな。じりじりと迫るような暑さに追い詰められ余計に焦る。焦ったって何も変わらないのに。
「少し落ち着いてから帰ろう」
住んでいるマンションの敷地内にある公園(というか広場っていうのかな?)で少し気を休めようと向かう。
ここはマンションの影で昼間にあまり日が当たらないせいか、涼しく、通り抜ける隙間風はひんやりとして気持ちいい。
はあ、と溜息をつき煙草を取り出す
「お嬢様さんまだ若いんですから煙草良くないですよ」
「は?え?」
私から煙草を取りあげたのは高校の時の後輩で
「久しぶりです。九条先輩」
「久しぶり...佐伯くん。あれコッチ来てたんだね」
「はい。先輩追いかけて来ちゃいました」
は?何を言ってるんだこの子は。来ちゃいました、じゃないでしょう私今相当間抜けな顔してるかも。ああ恥ずかしい。彼は楽しそうに笑って嘘ですよ。と言う。
「先輩に会いたいと思っていたのは本当ですよ。このあと食事とかどうですか?あ、いや、えっと...」
彼は言葉を詰まらせる。どうしたのだろうか。すると、
「お嬢様さん、今夜食事でもどうですか?」
私に手を差し伸べ問いかける。何それ。私が高校時代に一度言われてみたいんだ。と言った言葉を覚えていたのだろうか。嬉しいじゃない。
答えはもちろん決まっている。そっと彼の手を取り
「よろこんで」

20140823


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tityle:Largo 様よりお借りしました。
企画サイトReborn様に提出

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