時には休息を。
とある日の午後。
ジリジリと暑い日差しを受ける中で、ひたすらヒーロー基礎学の授業を受けていた1-Aのクラスは、無けなしの体力を絞り出しながら授業に取り組んでいた。
今日は相澤のサポート役として、零も加わり、いつも以上の神経をすり減らし、動いたせいかどっと体力が奪われたような気さえした。
「はい、じゃあ今日はここまで。お疲れさん。」
緑谷出久は、パンっと手を叩きながら授業を閉める相澤の声に反応し、額から流れる汗を拭った。
「いやーあちぃなマジで!!下手したら熱中症になっちまいそうだぜ!」
「ホントですわ…もうそろそろ夏も終わる頃だというのに、暑すぎです。」
「熱中症にならないように気をつけないとねぇ。」
授業を終えて皆が小言を零しながら歩いていると、ふと零の姿を捉えて、足を止めた。
「……零さん?」
少し様子がおかしい。
授業を行っている時はさほど気にならず、むしろいつも以上に反応が早くて、気配にも敏感だった彼女が、今は足元がふらついて肩で息をしているのが一目見れば分かる。
声をかけようと思い、零の元へと駆け寄ろうとしたその瞬間。
突然前方にいる彼女の身体がグラりと傾き、一瞬の間に地面へとたどり着いた。
「零さん?!!」
「ちょっ…、おい。しっかりしろ!」
自分とぼ同時に彼女の元へやってきたのは、血相を変えた爆豪だった。
倒れた零の身体を急いで起こし、必死に何度も呼びかけるが、それに対しての反応はない。
「……っ、何があった、零ッ!?」
「轟くん、零さんが!!」
「早く保健室へ連れていかねえと…!」
「…………ひでぇ熱だ。」
その場に駆け寄った轟が触れようとすると、彼女から一度も目を離さなかった爆豪が、そっと優しく額に触れ、そう静かにこぼした。
気づけばほかの生徒たちも集まってきては零の辛そうな表情を見て動揺する。
「零さん?!どうしよう……!」
「きゅ、救急車?!」
「ひとまず相澤先生を呼びに行こう!たぶんまだ校舎に戻る道中にいるはずだし!」
「僕が行こう!!」
足の速さには自信がある!と付け足して、委員長である飯田が個性を発動して颯爽と姿を消す。
ほっと胸をなでおろして、再び零の方へと目を向ければ、爆豪が彼女の身体を抱き抱えて、焦っている表情を目の当たりにした。
ーーあのかっちゃんが、零さんが倒れたのを見ただけですごい動揺してる。
不謹慎にもそんな光景に驚きを覚えては、相澤が到着するのを今か今かと待ちわびていたのだった。