宣戦布告
翌日。
「零さんっ!その首の痣ってもしかして……!」
寝不足でみんなよりも一足遅くに共用スペースに訪れると、零が皆に取り囲まれている光景を目の当たりにし、密かに口角を上げた。
『ん?あぁ、これ?』
「……大丈夫か?痛てぇか?また怪我したのか、零。」
「「ブハッ……!」」
ド天然というか、零と肩を並べられる無知な轟に、数人の生徒は吹き出した。
「いや、轟くん。これ、怪我じゃなくて……たぶん……」
苦笑いをうかべている緑谷は、そんな彼に慌てて説明をしようとするも、彼の初さではとてもじゃないが口に出さない様子。
轟は不思議に思いつつも、再び張本人に問いただした。
「怪我じゃねぇのか?零、昨日の夜何があった。」
『ある優しい人が、私を守る為につけてくれたんだよ。』
「「「だっ、だれに?!」」」
『えっ?!い、言えないよっっ?!』
詰め寄るクラスメイトに、慌てて両手を左右に振る零。
どうやらあそこまで純粋だと、他の奴らもそれが“キスマーク”だと言う真実を彼女に告げられないのだろう。
各々が困惑した様子で、じっと彼女を見つめることしかしていなかった。
そしてこの週末、生徒たちの間で誰が零にキスマークを付けたのかが、密かに話題になっていた。
てんで興味がないようにその会話を他人事のように聞きつつも、時折零の首元を見つめては、しばらく優越感に浸ったのだった。