宣戦布告


翌日。

「零さんっ!その首の痣ってもしかして……!」

寝不足でみんなよりも一足遅くに共用スペースに訪れると、零が皆に取り囲まれている光景を目の当たりにし、密かに口角を上げた。

『ん?あぁ、これ?』

「……大丈夫か?痛てぇか?また怪我したのか、零。」

「「ブハッ……!」」

ド天然というか、零と肩を並べられる無知な轟に、数人の生徒は吹き出した。

「いや、轟くん。これ、怪我じゃなくて……たぶん……」

苦笑いをうかべている緑谷は、そんな彼に慌てて説明をしようとするも、彼の初さではとてもじゃないが口に出さない様子。

轟は不思議に思いつつも、再び張本人に問いただした。

「怪我じゃねぇのか?零、昨日の夜何があった。」

『ある優しい人が、私を守る為につけてくれたんだよ。』

「「「だっ、だれに?!」」」

『えっ?!い、言えないよっっ?!』


詰め寄るクラスメイトに、慌てて両手を左右に振る零。
どうやらあそこまで純粋だと、他の奴らもそれが“キスマーク”だと言う真実を彼女に告げられないのだろう。
各々が困惑した様子で、じっと彼女を見つめることしかしていなかった。

そしてこの週末、生徒たちの間で誰が零にキスマークを付けたのかが、密かに話題になっていた。

てんで興味がないようにその会話を他人事のように聞きつつも、時折零の首元を見つめては、しばらく優越感に浸ったのだった。


10/10

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