あなたの視点


相澤は、廊下を歩くプレゼントマイクと零の姿を前にして、自然と表情が険しくなった。

一見いつもの様に同期のマイクに肩に腕を回されて面倒そうな顔をしている相澤の後ろ姿。

しかし、今あの身体の中にある心は間違いなく零だ。

フツフツと浮かぶ嫉妬心に苛立ちを感じつつ、周囲に誰も居ないことを確認して、ズカズカと二人へと歩み寄った。

「おいマイク。お前昨日の件忘れてないだろうな。今俺の体ん中にいるのは零だ。俺じゃない。」

零の肩に回しているマイクの腕を掴み強引に引き離すと、彼は驚いた様子で零と相澤を交互に見た。

「……え、えぇッ?!ちょ、ちょっと待ってくれWhat's happening?!」

「なにって、零と俺の中身が入れ替わったこと、お前も知ってんだろ。」

「え、え、じゃあ、俺が今肩を並べ待て歩いてたのは…?」

『ふふっ、マイクさん。引っかかりましたね。』

「……?!」

ようやく緊張の糸を解いたかのように、零が頬を緩めて小さく笑う。
マイクは未だに信じられないのか、両手で頭を抱えて壮絶たる表情を浮かべた。

「ま、マジかよCRAZYーーッ!俺はてっきり、完っ璧に戻ったもんだと思ってたぜ!…だってさっき、ブラドと話してたとこ見たけど、全然違和感なかったんだぜ?!」

癪ではあるが、マイクの気持ちはとてもよく共感出来た。
しかし、現状は何一つ改善されてなどいないのだ。

「俺も驚いたよ。零がまさか、こんなにも他人になり済ませる才能を持ってたなんてな…」

『いやぁ、私も元々隠密ヒーローですからね。変装して活動することもしばしばあるんで、それなりにできないと、命がいつくあっても足りませんよ。』

「「いや、そりゃそうなんだが…」」

マイクと相澤は、ヘラッと笑ってさも簡単そうに話す零に目を細めた。

『特に消太さんは、今までで誰よりも見てきましたからね。余程のことがない限りは、バレずにいけると思います。』

「いやぁ、俺もまんまと騙されたわ。っつぅか、零チャンも言ってよ!」

『えー、スイッチ入ってるんで早々簡単に崩せないんですよ。まぁ、マイクさんを騙せたら問題ないかなって試した部分もありましたけど…』

平然とした顔で、よくもまぁそんな事が言えたもんだ。
相澤はいつもと何ら変わらない零に敬服しつつも、呆れた目で彼女を見つめた。

「Oh...完全にやられたぜ。完敗だ。完敗だけに昼飯奢るぜ、おめぇら。」

『わーい!ありがとうございます!』

「なんか、イレイザーが可愛く見えてきた…」

「おいやめろ。変な気起こすなよ。」

「起こさねぇよ!冗談でもねぇッ!」

マイクと隣同士で睨み合いながら、三人で廊下を歩いて昼食を取る場所へと向かう。
きっと傍から見たら、異様な光景なのだろうと思いつつも、零は新鮮なやり取りに心を弾ませながら足を動かしたのだった。



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