仲間
相澤消太は身体中に痛みが走る中、諦めずに何とか敵の攻撃を防ぎ、どうしたら勝てるのか必死に算段をしていた。
近くで交戦している轟と飯田も既に体力の限界を迎え、今や2人の敵に対し、太刀打ちできるのは自分と久我の2人と言っても良いだろう。
しかしそれに対し敵の二人は個性を消してもなお、装備している武器やその身を駆使して対等…いや、それ以上の力で挑んでくるのだ。
負傷や体力の点から見ても、明らかに部が悪いのはこちら側だ。
今は個性を発動させて相手の個性を消しているからまだいいものの、一瞬でも気を緩めて解除してしまえば、形成は一気に傾くだろう。
何より散らばってしまった、ほかの生徒達も安否が気がかりだ。
体力が落ちてきたせいか、徐々に集中力も途切れかけしまっている中、負傷して倒れている轟が上半身起こし、こちらを見て叫ぶのを目にした。
「……っ、先生ッ!!危ねぇッ!」
その声と同時に目の前に敵の姿が現れ、ニタリと薄気味悪い笑みを浮かべている顔が視界を占めた。
「終わりだ、イレイザーヘッド。」
奴は小さな声でそう呟き、そっと額に触れた。
「貴様はもう体を動かせない。私が個性を使えなくなるまで。絶対にだ。」
「しまっ……!!」
気づいた時には既に遅く、瞬きをした瞬間に奴が個性を発動させ、“催眠”をかけられた。
敵が放った言葉を耳にした瞬間、身体が鉛を乗せているかのようにずっしりと重みを増し、その場に崩れ落ち、地面にへばりつくように横たわった。
「ぐっ……!」
「そう気負いするな。どうせ今回関わった者は誰も生き残れん。」
「きっ、さまっ…………!」
急に動きを止めたせいか、気を紛らわしていたはずの怪我の痛みが再び感じ始め、血を流しすぎたせいで瞼すら重くなってきた。
吐き出した声は枯れ、何とか頭だけでも動かして個性を消したくも、その願いは適わない。
「「先生っ…………!!」」
「くそっ、イレイザー!!」
「おっと、余所見していいのか久我捜査官。」
「ぐっ、あぁっっ……!!」
遠くでこの状況を察知した久我の声が聞こえては、すぐに彼の悲痛の叫び声を耳にする。
助けに来てくれようとしたのだろう。
しかし奴らはそんな隙をも見逃さない、手強い連中だ。
声すらまともに出せなくとも久我に敬意を思う反面、心の中で自身の力のなさに失望していた。
ーーアイツはいつだって俺の力になってくれたというのに、俺はあいつに何一つ加勢して助けてやる事もできないのか…。
ずっと一緒に生きてきた零を、こんなところで死なせたくない。
せめて生徒とお前だけでも、なんとかーー
「死ね、イレイザーヘッド!!」
そう荒らげた声を聞いて覚悟を決めた矢先。
凄まじい殺気と風を感じたと同時に、敵のうめき声を耳にしてハッと我に返った。
そしてこれから状況は急展開を迎えるのだった。