6話



シオンが『異形の人間』についての話を初めて聞いたのは中学生の頃だった。クラスの男子がシオンや周りの友人に知ったかぶって話したそれが記憶している最初の話である。

『異形の人間』とは通常人間に基本的に備わっているもの以外に、特異な能力の備わった人間のことを指す。その昔、いつ頃かははっきりしないが、彼らは社会的な貢献を目的として研究、開発され、人工的に作り出された生身の人形であった。

最初の頃はそれしか聞いたことがなかったが、時を経るにつれてシオンの耳に入ってくる情報も少しずつ増えていった。

開発当初、人形は人間の思い通りに動き、人間の力を超越しているような物事を難なくこなした。研究者達は、これらの開発は成功したと歓喜した。しかし、『異形の人間』はあくまでも生身の人間であり、けしてただの人形ではなかった。時が経つにつれて、人形は次第に人間になってきた。研究者達が恐れていたことが起きてしまったのだ。

『異形の人間』は通常の人間と血が混ざらないように、ある程度隔離された場所で生きていた。また、血が濃くならないように、子供も作らせず、死後は跡形もなく処分された。ある時その事実を彼らは知ってしまったのだ。

彼らは反乱を起こした。特異な能力を持った彼らが研究者達から逃げ出すなど、とても容易なことであった。『異形の人間』達は通常の人間達の社会に紛れ込み、能力を隠しながら生きた。その時からだ、自然発生的に『異形の人間』が生まれるようになったのは。
そして、利己心から生まれた現代の化け物は、今も少しずつ社会に浸透しているらしい。

長い年月を経る中で、『異形の人間』の種類も増えていた。なにかに役立つ能力を持ったものも居るが、全く役に立たない能力を持つ者もいた。優良な能力、劣悪な能力、能力保持者の判断一つで大きく運命が変わるような能力もある。ただ、『異形の人間』が堂々と生活するためには、現代はあまりにも暮し辛い場所であった。結局彼らは能力を隠しながら、コソコソと慎ましく生きる道しか選択できないのであった。

どこの噂も大概がこのような語り継がれ方をしていた。嘘か本当かの判別もつかない。普通に考えれば、確実にありえないことなのだが、妙に話がリアルで、にわかに信じがたいことであってもまるで実際にあったかのように人々の恐怖心をあおる。

これが『異形の人間』の噂の全貌である。


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