4話



赤ん坊の泣き声が部屋に響き渡る。即座に、母親らしき一人の若い女性がその子を腕の中であやした。
「お母さんここにいるよ。大丈夫だよ」
赤ん坊はなかなか泣き止まなかった。
「まったく、ナナリは泣き虫だな。ほら、いないいないばぁ!」
「もうっ…あなたやめて。さっきよりも泣いちゃってるじゃない」
その家はとても模範的な新婚夫婦で、はたから見ればとても幸せそうに見えた。しかし、誰が想像できただろう。時を経るごとにその家族が崩壊していく姿を。

「ナナリ、それ食べちゃダメよ…!ナナリってば!」
少し経ったある日、自ら動けるようになり行動範囲の広がった赤ん坊は、ふとしたことからビー玉を呑み込んでしまった。焦った母親は急いで彼を病院に連れて行った。医者からは、自然に出てくるのを待つしかないと言われ、数日間、くまなく赤ん坊の排泄物を調べた。しかし、ビー玉が出てくることはなかった。
「レントゲンを撮っても、体内にはなにも写ってないんですよ。多分消化したんでしょうね」
「なにを仰ってるんですか先生、ビー玉を消化できる人間がどこにいるんです…?!」
「異形の人間かもしれません」
医者の言葉に母親は耳を疑った。彼女も風の噂で聞いたことのあった異形の人間が、まさか本当にいるなんて。そしてそれが、自分の子供であるなんて。彼女は激しく取り乱した。
「そんな、そんな…ナナリが、そんなはずはない…うちの子は、普通の子です…!うちの子に限ってそんなことは」
「いいえ、可能性としてはあります。最近報告例が増えていまして、ナナリくんは異形の人間だと疑った方がいいですよ」
医者はいたって冷静に言い放った。

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