38話

静けさを取り戻した部屋で、小さな拳銃を片手にわなわなと震えながら、シオンは涙を流した。
「終わったんだ」
そう、柄にもなくつぶやいてみる。
興奮は収まらなかった。これからどうしていいかもわからなかった。思い当たる選択肢は一つしかないと、自らに銃口を向けて引き金を引いた。


部屋には虚しくカチ、という音が響いただけだった。だれの幸せももう望まれていない。そういう母親からのメッセージなのかもしれない。

あの時、なぜ引き出しの中にこのようなものが入っていると気づいたのか。それは、本当に突然、彼の中の記憶が蘇ったからである。

それは母がなくなる直前の出来事。今からちょうど10年前の話だ。シオンは一人で病室に呼ばれ、母から少し重い茶封筒を受け取った。その時に母親に、お母さんがもしいなくなっちゃったらその時にシオンだけで読んでね、といわれたのだ。母が亡くなってからシオンはその封筒を恐る恐る開けた。中には数枚の便箋と小さな拳銃が入っていた。


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