34話

ある朝、姫齧家に一本の電話が入った。それは母親が亡くなった知らせだった。
シオンは7歳、アクメが10歳、ナナリは14歳。この苦しい世界で子供だけで生活していくのには到底無理があったが、母の残した財産と、家、そして彼らの面倒を見るものはいなかったが、彼らが働く場所をいくつか提供してきた人のおかげでなんとか3人で生き延びる希望を持つことができるようになったのである。

ナナリとアクメの意向で、シオンは学校に行き続け、この世界の負の連続を断ち切るよう、できるだけ進学することになった。学費と生活費を稼ぐため、ナナリとアクメは同じ場所で身を粉にして働いた。少しの間はアクメもナナリに対してなにか起こすということはなかったのだが、ある時から以前のように、むしろ以前以上にナナリを嫌うようになり、ついにナナリは退職まで追い込まれた。

そして、シオン17歳、アクメ20歳、ナナリ24歳になった今。ナナリが仕事をすることができなくなったあの日から変わらない。シオンは学校へ、アクメは職場へ、そしてナナリは行くあてもなくフラフラと彷徨い、家に帰ればアクメから暴行を受ける。その生活が10年も続いているのであった。


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