33話

その日2人が帰った後にもちろんナナリも面会に来た。
「いらっしゃい。最近はどう?大丈夫?」
ナナリは腫れぼったい目でこちらを見つめてゆっくり頷いた。
いつもナナリの体には異常なまでの青あざや切り傷がある。これらの痛々しい傷はおそらくアクメがつけたものだろう。加えて目の周りは泣き腫らしているし、身なりもボロボロで、同じ兄弟とは思えないほど彼らには大きな差があるのだ。
「ナナリ、ナナリはもう14歳だよね」
母親のその当たり前の問いかけに驚いたのか、ナナリは少しだけ間を空けて頷いた。
「じゃあ、もうナナリは強い子だよね…?」
ナナリは目をぱちくりさせながら躊躇うようにもう一度ゆっくり頷いた。
母親は少しだけ戸惑ったが、やはりいつかは伝えなければならないことなので、それをいつまでも自分だけで抱えておくことは得策ではないと思った。母親は深く深く呼吸をして、もう一度ナナリと向き合った。
「あのね、聞いてねナナリ。お母さん…お母さんもうすぐいなくなっちゃうよ」
それを聞いてナナリはなんのことかわからないようで、まだ先ほどのようにキョトンとしているだけだった。
「もう、すぐ、こんな風にも会えなくなっちゃうんだよ、ねぇ…ナナリ…っ」
母親は微笑みながら涙をこぼした。その様子を見て事態を把握したナナリの顔には絶望の色が見えたのである。途端に、きちんと膝の上に揃えられていた痩せた両手が発作のようにガタガタと震えだす。そしてその決して広くはない甲に大粒の涙が落下した。
「いや…い、や…やだぁ…や、あ、あ…っ」
ライトに淡く照らされた病室に嗚咽と悲嘆の声がこだまする。その隣で母親も静かに涙を流した。

「ナナリ、あのね。聞いて欲しいの」
少しだけ落ち着いたその時に母親は語り始めた。


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