28話

母親が家に帰ってきたのはそれから1日後の夜で、子供たちは眠っているはずの時間であった。しかし窓からは電気の明かりが漏れており、中で何かが起こっていることは明らかだ。もしかすると、自分の帰りを待っていてくれたのかもしれない。そういう考えも母親の脳裏によぎったが、それよりも一抹の不安のほうが勝っていた。やけに静かな家の中に多少の期待感と多大な不信感を抱きながら、明かりの漏れていた部屋の扉を開けるとそこにナナリが血を流しながら倒れていた。
「ああ、ナナリ!」
戸口で倒れるように座り込み、その目も覆いたくなるような光景をまじまじと見つめた。そしてやはり家を空けるべきではなかった、とこれまでにないほど後悔した。
「ナナリ…しっかり…して。ナナリ、返事、して」
ナナリの体にそっと触れると、返事こそないものの、消え入るようなうめき声と同時に微かに指先が動いた。それを見て母親は少しだけ安心した。


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