26話



「ナナリ、どうしてナナリは僕にあんなものを見せるの」
あんなにも口に出すことを憚っていた言葉がすんなりと出てきたことに彼は驚いた。ナナリが眠っているからだろうか、いや、それもあるがきっとそれだけではないだろう。もっと見たい、知りたい。今、彼はそんな風に思っているのだから。
「見たい」
ナナリの耳元でそう囁いた。シオンは今までにないくらいきっととても真面目な顔をしていた。
ナナリのすぐ横に添い寝をして彼の乱れた髪を掻き分け、汚れた顔にそっと手を添える。ナナリはピクリともせず死んだように眠り続けていた。シオンはじっとナナリの顔を見つめたが、今まで見ていたような幻影をみることはできなかった。彼はナナリから送られてくる意識を読み取ることしかできないことを悟った。それでもなにか感じ取れることはないかと、懸命に意識をナナリに傾けてみるも、何も起こらない。やるせなくて目を閉じた、彼の意識は次第に朦朧とし始めた。その中でナナリがこちらを見つめているような光景をみた気がしたが、夢と現の狭間で揺れていた彼にはそれが真実か嘘かさえも判断がつかなかった。


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