21話


「は?」
あまりに突拍子もない話の展開に、シオンは思わず驚嘆の声を上げた。
「無遅刻無欠席のお前が珍しく今日は大遅刻をしてきたな。それに関係があると思うんだよ」
「何言ってるんだよ、僕とその犯人になんのつながりもないだろ?」
「まだ証拠はあるぞ」
友人は得意げに話を進める。
「お前の掃除場所は中庭だろ?」
「まあ、確かにそうだけど…」
「事件が起こっているのがその中庭なんだ。あと、この教室の、ちょうど窓際の席…今お前が座ってる席から見える垣根の辺り」
シオンは窓の外を一瞥した。確かにこの位置から垣根が見えるし、周りに木や草が生い茂っていることから、絶好の場所のようにもみえる。ただ友人の話はうまく作られ過ぎていて、なんだか信憑性が薄く感じられた。
「ふん…たまたまでしょ」
馬鹿馬鹿しい話だ、とシオンはそれを鼻で笑った。
「そうとも言えない…その2年の不良、昔お前に因縁つけてきただろ。しかもその時かなりやばかったし。お前への嫌がらせみたいにも見えるけどな」
「そんなのこじつけだよ。それに、僕が憎いんだったら下駄箱にでも死体詰めとけばいい話だし」
「いや、そういう問題じゃなくてだな」
「はいはい、もういいよ面倒臭い」
シオンは机に突っ伏してゆっくりと目を閉じ、外の世界を排除した。とにかく今の彼には、ナナリのこと以外はすべて興味の持てないことであった。

放課後、廊下を歩いていると、いつぞや不審者の話をした女の教員とすれ違った。
「姫齧くん、今日は遅かったみたいだけど大丈夫?」
教員は心配そうに訪ねた。
「ええ、大丈夫です。今後は気をつけます」
ならいいのだけど、と教員は微笑んだ。シオンがそのまま歩みを進めようとすると、思い出したように突然教員が喋り始めた。
「あ、そうそう、今日はね、不審者現れなかったのよ。いつも来ているのにね…とても珍しいわ。でも今までも学校の周りをうろつくだけで、何もしてこなかったみたいだから、来ても来なくても変わらないかなって先生は思っているのだけど」
「その人、あの事件とは関係ないんですか?」
「あの事件…?ああ、あれか…そうね、今のところなにもわかってないから、一概にあの不審者が犯人とも、そうでないとも言えないわね…。まあ、これは先生方がなんとかしてくださるから、姫齧くんは気にせず勉強したり友達と遊んだりすればいいんですよ」
じゃあさようなら、と手を振って、教員は去っていった。

シオンはその不審者を疑っていないわけではない。しかしナナリが何かを殺した姿なんて、今までに一度も見たことがなかった。むしろ野良犬や野良猫などの小動物と戯れている姿のほうがよく見かける光景なのだ。シオンはナナリが犯人である可能性は少ないと考えた。否、ナナリがそんなことをするはずがないと、自分の中で数少ない証拠をかき集めた。

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