13話




アクメは順調に回復したが、ナナリに腕の肉を噛みちぎられたことによる精神的な傷と、えぐれてしまった腕の形は治らなかった。
あの後、母親がナナリから話を聞くと、彼曰く、彼自身も知らない間にアクメに噛み付いてしまっていたのだという。次に気がついた時には畳についた血の染みと指を舐めた跡が残っていたらしい。しかし、母親はそういうナナリを咎めることはなかった。それは、この行動ももしかすると異形の影響なのかもしれないと判断したからだった。ナナリが悪いのではない、異形の血が悪いのだと彼女は思い込んだ。
むしろ母にとって今大事に思えたのはアクメのアフターケアであって、ナナリを責めることではなかった。

アクメはあの日以来、ナナリに寄り付かなくなった。もしナナリから近づこうものなら、それこそあの日のように大声で泣いた。しかしナナリはナナリで事件についての記憶があまりないので、アクメに嫌われていることが悔しくてたまらず、アクメが何度泣こうとも懲りずに近寄っていった。
また、この事件のせいで夫に2人が異形の人間であることがばれてしまった。そして事件の内容も嫌でも知ってしまうことになってしまい、彼は息子達のことを以前みたく愛さなくなった。更に事件のことでナナリのことをこの上なく嫌い、まるで化け物を見るような目でナナリを見た。その事実についてもナナリは悔し涙を流すこととなった。

この事件のあった翌年。夫婦の3人目の子供である、末っ子のシオンが誕生した。

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