番外編2 執着・愛



「や…だっ…だめ、ナナリ…」
ふとした時いつもナナリはシオンに絡みついていた。それは彼に対してナナリがしつこいほどに愛情を持っていたからだ。その愛情は、少し歪んでいて、それをシオンは受け入れ難く、いつも拒んでばかりいた。
「んぁっ…は」
首筋に、ナナリの口にぴったりと貼られたガムテープの感触を感じて、シオンは肩を震わせた。シオンと絡むとき、ナナリは必ず口にガムテープを張っていた。それは遠い昔の約束を未だにナナリが破らずに大事にしているということを意味していた。
それほどまでに、どこまでもねっとりと、シオンに執着しているナナリは彼の向こう側に違う面影を見ているのだろうか。完全に瞳の輝きを失い、焦点の合わない視線がシオンの向こう側を見つめていることに彼は気づいていた。彼がナナリを簡単に受け入れないのもそのためでもあった。

キスマークの代わりと言ってはなんだが、首筋に引っかかったガムテープで描かれた赤い線を、今度はその華奢な指が愛撫する。ただ撫でられているだけなのに、その動作のひとつひとつにねっとりと絡みつくような情愛を感じたシオンの体は、思わぬ反応を見せた。
シオンは恥ずかしさに打ち震えた。その時、ナナリが微笑んだように見えた。
「あ…!ちょ、っと…ん……あっ…」
まるで全て分かっているかのように、絶妙なバランスで応えるナナリの指が、シオンをそっと包み込んだ。その時にはもう彼の瞳も、欲望に飲み込まれた獣と同じく濁ってしまったようだった。

彼のことが好きで、好きでたまらない。願わくば一つになりたい。
口に出さずともナナリの行動からそれがうかがえた。シオンとナナリとは今ゆっくりと繋がろうとしていた。
「あ、あ、だめ…ナナ、あっ!…いっ…」

自分のなかの満たされない欲望を、このような違う形で満たそうとしているのだろうか、ナナリは1日に何度もシオンを求めていた。彼の全てを自らのものにしたいという欲望と、彼を殺したくはないという想いが、ナナリの心をいつも苦しめる。おそらくナナリ自身も葛藤の末にこのような選択に至っているのであろう。

もう、日も暮れようとしている。この広い家の隅っこで朝方からずっと離れなかった2人は、お互いにしゃべることもしなかった。ただ一方的にナナリがシオンを愛し、シオンだけがその自由に動く唇から声を漏らした。
ナナリがこの葛藤をやめられない限り、いつまでも2人はこの戯れ事を続けていくしかないのだろう。いつまでも、いつまでも…。


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