●イメージ依存症

あの子は黄、私は青。
だからあの子と私は合わない。
あの子は水色、だから私と似ている。

「サアヤ、大丈夫?ぼーっとして」
「うん、なんでもないよ?」
この子は、紫。
「サアヤちゃん、今度の月曜遊びに行こうよ!可愛い服売ってるお店があるの」
「ごめん、用事あるんだ。遠慮しとくね」
この子はピンク。

私には癖がある。それは、人を色で分類してしまうこと。それをしなければうまく人と付き合えないし、不安でたまらなくなる。

私は幼い頃から人に対するイメージを膨らませて遊ぶのが好きだった。血の繋がった人でも赤の他人でも、その人に少しでも触れる機会がある時は必ずやっていた。それは特に、色において顕著であった。他人のカラーバリエーションはあまりにも豊富で、私にとってはそのイメージの世界がカラフルで興味深いものに見えたのである。

今私の周りには青色系統の友達がいる。色が近くなるほどよく調和し、遠くなるほど居心地が悪くなるのが私の大体のセオリーで、気が付けば色の近い友達ばかりとつるむようになっていた。
「サアヤ。あたしと、はるかと3人で遊びに行かない?」
彼女の色は空色であった。色系統も似ていて、よく気も合う。しかしはるかの色はオレンジだった。私とは合わない色なのだ。
「うん…考えとく!」
いつものように、気乗りしない時は話をはぐらかして、違う予定をつくろうとしていた。
「あんたいつもそれね。あたしと2人の時は遊ぶのに、はるかを誘った時は一回も遊んだことないの。サアヤははるかのことが嫌いなの?」
突然の友人の問いかけに、私は動揺した。
「違うよ、はるかのこと嫌いなんじゃないの。ただ、なんていうか…合わないというか…」
「えー?サアヤ、はるかと話したこともないのにー?」
そう。オレンジの彼女と話をしたことはない。ただ単に青の私とオレンジの彼女のイメージが合わないというだけで、私はあの子とつるまないのだ。

それから数年が経ち、私のまわりには青色イメージの友達しかいなくなっていた。数年前に見えたカラフルな世界は、今はもうぼんやりと視界の隅にぶら下がっているだけであった。

私はつまらなかった。その単色の世界は、私にとってとてつもなく味気なかった。

ある時私はイメージすることをやめた。そうすればカラフルなあの頃の世界が戻ってくると思った。しかし、現実は違った。まるで白黒テレビで世界を見ているような感覚だった。

結局、私はイメージをやめないことにした。現実とイメージの狭間で今日も私は揺れている。


〜fin〜


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