●パンツ依存症


「あ、才苗ちゃんこっちこっち〜!って、なにその荷物…まさか」
「うん。ごめんね、やっぱ落ち着かなくて…」
才苗は、アタッシュケースとは別に持ってきたリュックサックのチャックを開けた。そこには可愛らしいランジェリーが目一杯詰め込まれていた。
「これだけじゃないの。違うタイプのもちゃんと持ってきた」
才苗がレースの海に右手を突っ込んで中身をかき混ぜると、ブリーフやトランクス、ボクサーパンツにTバッグも入っている。その光景に彼女の友人は皆、慣れたように呆れ顔をした。

才苗とその友人は旅行が趣味で、こうして数人で集まってよく旅行に行くのだが、その旅で毎回才苗は大量の下着を持ってくるのだ。もちろん、その下着達は使われるために旅行に連れていかれるのではない。あくまでも、才苗の精神安定剤として旅のお供をするのが役目であった。

彼女はパンツ依存症である。そのため、下着といっても特にパンティーの類に特化したコレクションを、いつもリュックいっぱいに詰め込んで肌身離さず持ち歩いた。普段の生活では、いつもリュックを背負っているわけにもいかないのが現状なので、パンツからリメイクしたアクセサリーを身につけていた。

「才苗ー、ほんとそれ使わないし、荷物になるし、置いて行こうよ。せめていつものパンツアクセサリーにしようよ」
「だめ、だめ、落ち着かないの。それに、使わないことないよ!ホテルのベッドに敷き詰めて寝る」
「それ、パンツをパンツとして扱ってないから」
友人は半分諦めたようにため息をついた。どうせ何を言っても状況が変わることはないということを、今までの経験上知っているからだ。それ程に、才苗のパンツ依存症は重症だった。

「どうせ向こうでまた大量に買うんでしょ?パンツ。その分差し引いて持ってこないと…」
「差し引いてこれなの!」
「もういいよ才苗ちゃん…飛行機の搭乗手続きしなきゃ…」
友人の1人がついに諦めて空港の入り口へと歩き始める。それに続いて次々と歩き出す友人に遅れをとりながら、才苗もついていく。
夢の詰まったリュックを抱いた才苗の旅は、まだ始まったばかりである。


〜fin〜

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