●リピート依存症


「呼びタメかぁ…どんなニックネームにしようかな…」
いつものようにスマートフォンを手にとってベッドに寝転がった楼蘭は、ツイッターのタイムラインを眺めていた。
「歩夢…?ほむちゃんでいいかな」
(じゃあ、ほむって呼ぶね!)
早速彼女は文字を打ち込む。
(ほむむ?なんか珍しいね、初めて言われたよ…よろしくね〜!)
「えっ?ほむむ?」
相手から違うニックネームが返ってきて、彼女は自分のツイートを確認した。そこには確かにほむむ、と書かれていた。
「私ほむむなんて打ったっけ…」

その数日後。
ツイッターでただいまとつぶやくと、仲良くしているフォロワーからおかえりと反応が返ってくる。
「あ、ほむむから反応きてるわ」
(ほむむおかありー)
結局この間の打ち間違いのままニックネームになったのだが、
(ほむむむむ?えっ、なんか増えてる!)
相手からそう反応が返ってきたので、自分のツイートを確認すると確かに『む』が4つ打たれていた。
「おかしいな、次はちゃんとしなきゃ…」
しかし、そう思った彼女の心には困惑とはまた別の感情が生まれていた。

それからまた少し経って、同じようなことを繰り返しているうちに、楼蘭の心は完全に変わってしまった。言葉や、文字や行動を繰り返すことが快感になっていた。彼女はリピート依存症になったのだ。
(ほむむむむむむむー)
日を追うごとに『む』の数は増えるし、
(やばいんでる、みどりんでる!)
気に入った語尾はなんにでも繰り返しつけた。

いつしか楼蘭のアカウントは同じような
言葉と沢山の『む』で埋め尽くされた。彼女は今日も繰り返しの毎日を晴れやかに生きている。

〜fin〜

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テーマ「人外ファンタジー」
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