●3等分依存症
「ひな、はやく食べなよ」
「うん、ちょっとまって。うまく割れない…」
「そんなのどうでもいいから!もー、見てるこっちがイライラするっ」
ひなの前には割れたおかきの残骸が積み上げられていた。そのほとんど全てを彼女の友人が食し、ひな自身は割るだけ割って食べることはない。どうやら割れた数や大きさが気に入らないらしい。もうかれこれ30分は部屋におかきを割るパキッという気持ちのいい音が続いている。
「ねーもうおかきなくなっちゃうよ?ひなこれ好きじゃん、食べないの?」
「だって綺麗に3等分にならないんだもん…!」
パキッ
「あーまたダメだ〜」
おかきだけに限らず、ひなはなんでも3等分にしたがった。食べ物は彼女の手によって毎回3等分にされてから食べられるし、髪の毛も三つ編みばかりする。そんな彼女の天敵は数学であった。なぜなら3で割れない数字が存在するからだ。そのため彼女は、3等分するときに数字で測ることはなかった。とことんこだわるが、いつも必ず自らの目で見極めた。
気がつけば、おかきは残り一枚になっていた。
「ああもう。…集中しなきゃ…」
何度も手を振り下ろし、シミュレーションをしたあとに一度深呼吸をしてから目をつぶる。それに重ねて友人はため息をついた。友人はこのあと起こりうる展開を予想していた。
パキッ
「……ダメだ…失敗…すーちゃん…お」
「はいはい、おかき追加ね、買ってくるから」
悲しくも彼女の予想は当たってしまったのであった。
〜fin〜
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