The 19th mischief
12月に入って、日本の北海道と同緯度に位置するイギリスはよりいっそう気温がさがり、雪が降るようになってきた。
寒いというより肌を刺すように冷たい空気は、この寒さをあまり経験したことのない私にとってそう簡単に耐えられるものではない。
談話室にある暖炉は私の定位置になり、たまに首なしニックと話ながらココアをすするのが日課となっていた。
「そういえばそろそろ二回目のホグズミートですな」
ソファに座る私の隣の空いているスペースから、ニックがその透けた頭をにょっきと出して話しかけてきた。
そう言えばそうであった。
あれからその話は話題に上がらなかったため、すっかり頭の隅に追いやられていた。
そんな私が言えることではないが、ジョージはきちんと覚えているだろうか。
「サヤは誰かとご予定でも?」
きちんとソファに座り直したニックが口をひらく。
透けるからだでどうやって感覚をつかんでいるのだろうか、いや、そもそも感覚はあるのだろうか。
逸脱していきそうな思考をもとに戻し、背の高い赤毛を思い浮かべる。
「えっと、うん。約束はしてるよ」
「ほうほう。若いですなぁ……。羨ましい。」
小さく答えるとにやにやと笑われる。
若いですなぁ。というか、ニックは何歳なのだろう。
死んでからの年月は加算式なのだろうか。まずそこがわからなくては。
「に、にやにやわらわないでよ。別にそういうのじゃっ」
いうとニックは口角をさらに上げ、意味ありげに相槌をうつ。
と、そのとき談話室のドアが開き、誰かはいってきた。
高身長に赤毛、垂れぎみの琥珀の瞳。
「ジョージ?」
「あたり。」
ニックはいつの間にかいなくなっていて、ちょうどその位置にジョージが座る。
「どうしたの?」
「あー、うん。えっと、ホグズミート、もうすぐだよな」
「うん。指切りしたよね、覚えてるよ」
忘れていたわけではない。
他の事に気をとられて脳内の端の方に追いやられていただけだ。
断じて、断じて忘れていたわけではない。
脳内で、大事なことなので(ry
と付け足し、顔はにっこりと笑う。
秘技、営業スマイル。
「よかった。実はちゃーんといくとこ下見してあるから、楽しみにしてろよ?」
漫画ならキラキラとしたトーンが貼られ、にっという効果音がかかれているだろう完璧な笑顔だ。
欧米では赤毛はマイナスイメージと聞いたがそれを振り払うほどのかっこよさを持っていると思う。
ここまでいうと、欲目を入れすぎと言われるかもしれないが、現に双子は一部のスリザリン生以外からは人気がある。
「じゃ、楽しみにまってマス。」
それだけいって、はた、と考え直す。
下見って、
前、ミランダと一緒にいったってこと?
なんだか、なんだかもやもやする。
喉のなかに小骨が引っ掛かったみたいに、ちくちく、どんなに唾を飲み込んでも取れない。
自分が勝手に好いて勝手に傷ついてるだけということはわかっていて。
ただそれを自覚するたびに引っ掛かった小骨は私の喉を内側から突き刺すのだ。
「おう。」
この笑顔を、彼女にも向けた?
この笑顔で、彼女の隣をあるいた?
これが恋かと、
私は自嘲したのです。
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修正前と大幅に変えました。
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