哀想/スタスカ | ナノ


空は青く澄み渡り、照りつける太陽は身体を温めるようにじんわりと熱を与える。
穏やかなその陽気に、俺は欠伸をかみ殺し、椅子へもたれかかった。


「一樹会長、寝ないでくださいね」

「んあー……はいはい」

洗面所から顔だけひょっこり顔を出した月子が、俺の様子を見てすかさず注意した。
妙に勘がいい辺り、結婚したら完全に尻にひかれそうな気がしてならない。

昨日から俺の暮らすアパートに遊びに来た月子は、いそいそと洗面所で出かける準備をしている。
昨晩、上から下までバッチリ見たんだから、別にここで着替えてもいいんだが、昨日は昨日、今日は今日。と、そういう問題ではないらしい。

『ここからは立ち入り禁止です。絶対に入らないでくださいね』

と、指で透明な線を引き、そこから先へは俺が侵入することが一切許されていない。一体誰の家なんだと一瞬忘れそうになったが、可愛い彼女の頼みなのだから、聞いてやらない訳にもいくまい。

それにしても月子が洗面所の奥へと消えてから一体どのくらい経ったと思っているのか。

風呂も込みなのだから多少仕方ないと許容していたが、かれこれ二時間は籠城しているだろう。
俺が寝たくなる気持ちも、分かって欲しいもんだ。

仕方なく、目の前にあった新聞に目を通していると、新聞の端からこちらに近づく月子の姿が映った。

「一樹会長、お待たせしました」

視界を上げた俺は、月子の姿を目にして固まった。

そこにいた月子は、今までの清楚で可愛いイメージと雰囲気が違っていた。
素が良いのだから、可愛い事には変わりないのだが、あまりの変化に驚くしかない。

「どこの美人かと思ったぞ」

やっと言葉を出したくらい、その姿はガラリと変わっていた。
俺の言葉に、月子は嬉しそうに微笑むが、いつもより数段大人っぽい顔付きに、俺の心音は徐々に速まっていく。

メイクの仕方とて昨日とは違うし、なにより服装も違う。確かにそれとて、清楚系と言われる部類なのだが、美人を思わず所が際立った。
しかし、速まる心音とは別に、言い知れぬもやもやが俺を覆う。

「……が、それで外に出るのは却下だ」

「えぇ?!何でですか?」

「スカートの丈が短いぞ」

そう、一番気になる点はそこだった。
急に変革を自ら求めたのは、月子なりに思うことがあったのだろう。
二歳離れた歳の差や、自分の子供っぽさを気にしているのも知っている。
……が、それとこれとは話が別だ。

「お前は、その姿を俺以外の誰かに見せようと思ってるのか?」

「……え?」

「他の誰かに、その姿をさらすのは……ちょっとな」

「そ、そんなにヒドいですか?!似合ってませんか?」

わたわたしながら全身を見回す月子に溜め息をつきながら、俺は立ち上がる。

ワンピースの裾からのびる、太腿に思わず目が行ってしまう。
膝上十センチ以上の丈など、屈んだだけで下着が見えるだろう。

俺だけが見るならともかく、他の奴らに見せてやる気は毛頭ない。
普段は可愛い彼女を見せびらかしたい気持ちが大きいが、ここまでくると心配で悶々しそうだ。

「いや、良く似合ってる……が、似合いすぎてて悪い虫が寄りかねないな」

そっと月子を抱き寄せて、つやつやと唇を飾るその色を舐めとる。傍に寄ると、やさしい石鹸の匂いが俺の鼻をくすぐった。

何度も舌を使いその口紅をはがし取りながら、俺はそっと月子の首裏に手を這わす。
驚きながらも口付けをすんなり受け止めた月子は、高揚とした面持ちで俺を見上げている。

「……って事で、この服は没収な」

口元に笑みを浮かべながら俺は月子の努力を踏みにじるように無慈悲に告げ、背中にあるワンピースのファスナーを引き下ろした。






くださいくださいってうるさいですか
11.03.13
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