※18歳未満(18歳の高校生含む)閲覧不可
winterの翼ルート、ネタバレになります。
ご注意ください。
冬は嫌いだった。
じわりと寒さが身体に染み込み、気付いた時には痺れたように動けなくなっていて。一人で縮こまって寒さに耐えるのが嫌だった。
吹き付ける北風に首を竦めて見るものの、対して温まりもせず身体は冷えてく一方で。
かじかむ手に息を吹きかけてみても、それは同じ事。
ごまかすようにポケットに突っ込んで、グーとパーを繰り返す。
比較的寒くない地方に住んでいたけれど、それでも冬は寒くて……嫌だった。
寒い、寒い……寒いよ。
そう泣きながら耐えていた自分を思い出して、小さく笑った。
もう、今は寒くないよ。だって……俺には……。
初めて自分の部屋に君を入れた途端に、君は酷く驚いた顔をしていた。
「……散らかって、ないね」
水瓶座寮の惨状を人伝えに聞いて知っている月子は、俺の部屋を見回して、そう一言言った。
「ぬはは。ばあちゃんが掃除してくれてたからな」
「そっか」
一年の冬を境に、俺は長い休みの度に実家に帰る様にした。
今まで一度も帰らなかった日々を埋めるように。
いってらっしゃい。とぴしゃりと言って送り出すばあちゃんが、おかえりなさい。ってあったかい笑顔で玄関まで出てきてくれると、なんだか照れくさい気分になる。
四年以上すれ違いをしていた祖母と孫の関係は、簡単に覆せるものじゃないと分かっているけど。
あの時にはない優しさが、互いに満ちていた。
月子が卒業してから、もうすぐ一年が過ぎようとしている。
星月学園の生徒としての最後の冬休みに、俺は月子を連れて実家へ帰ることにした。
たった一人の家族であるばあちゃんとも一緒に居たいし、でも大好きな俺の彼女の月子とも一緒に居たいから。
ばあちゃんと月子は夏に一度逢っている。俺の家系の子供達は、女の子がほとんどいないから、可愛い月子にばあちゃんも嬉しそうにニコリと笑っていたのを覚えている。
来年になれば、俺はアメリカへ留学して二人とはなかなか逢えなくなっちゃうし、ずっと一緒に居られない。
知識を入れるのは好きだし、それが自分の夢だったら尚更その時間と労力は惜しまない。というか、苦にならない。
でも、大好きな人達と一緒に居られない事は、やっぱり辛い。
「うぬぬ……月子ともばあちゃんともずっと一緒に居たい」
「……私も一緒に居たいよ」
週に何度も交わす電話のやり取り。携帯電話から響いてくる月子の声を聴くたびに、俺も今すぐ月子の隣に行きたくなる。
月子を抱きしめたくなる。キスして一つになりたくなる。
でも、ぐっと我慢するんだ。いつまでも、子供のままじゃいられないから。
もうすぐ……念願だった冬休みだから……逢えるまで我慢。
月子かばあちゃんか。どちらかと休みを過ごすんだ。どちらかと二人で過ごすから我慢、我慢、我慢……ぬぬ〜!やっぱり我慢できない。
「月子、冬休み……忙しい?」
「ううん、特に決まった予定も無いよ。……その、ね、翼君といつ会えるかわかんないから、予定入ないようにしてたの」
恥らってそんな事言うなんて、本当反則。今すぐ逢いたくなっちゃうじゃんか。
赤い顔をしながらもじもじしている月子を想像して、口の端が引きあがった。
「じゃあさ、俺が冬休みの間、ずっと一緒に居よ?」
「……え、いいの?」
「いいの?って、月子はいいのか?家の人とか友達とか……」
「うん、だって私は大学通うのに実家の方に戻ってきちゃってるしから、いつでも逢おうと思えば逢えるけど……翼君とは、なかなか逢えないから」
――逢いたい。
その一言で、冬休みの予定の全てが決まっていた。
俺とばあちゃんとの間に、月子が居て。そうやって年を越していくのはなんだか不思議な気分だった。
俺が月子と結婚したらそうなっていくのだろうと思うけど。
のんびり進むようで、一日があっという間に過ぎて、それがすごくもったいない。
今この瞬間の、この日々をもっと何日も過ごして居たいと思うのは、無理なことだけどそれでも願ってしまう。
残り少ない時間を、倍にしてください。
その願いは大人になりきれてない、子供の最後の我侭。
それじゃあ、願い事をしにいこう。そう唐突に思いついたのは、そろそろ寝る準備をしていた頃だった。
「月子、星を見に行かない?」
「……え?」
「星、見に行こう」
寝巻きに着替えて布団も敷いて、あとは寝るだけなのに。
眠いだろうし、やっぱり無理だよな……。
言い出したと途端に、期待しぼんでいって俺は眉を下げながら、月子の返事を待つ。長い睫毛をばさばさと何度か上げ下げしたのちに、月子は確かに頷いた。
「いいよ」
「ぬは!本当か?」
「うん。私も星が見たいな」
週に一度は星を見てないと、落ち着かないんだよね。
そう言いながら、月子は笑って俺の手を取った。
しっかりと防寒をしてから、俺達は外に出た。
冬の空は澄んでいて、思っていたよりもたくさんの星が目に入る。
たぶん、星月学園の方が星が綺麗に見える。でも、こうして実家から見る星は、なんだか特別な気がした。
「あ、プレアデス星団があんなにはっきり見える。私の家の方だと、もっと薄ぼんやりしてるんだよね」
「うぬぬ、そうなのか?」
「うん。周りに街灯とかあるからね」
「そっか……」
「……ケラエノ、エレクトラ、タイゲア、マイア、ステロペ、」
密集したちいさな星星を指してなぞっていく月子に視線を合わせて見る。ああ、それは……。
「メロペ、アルキオネ……って、アトラスの七人姉妹か?」
「そうそう、消えたプレヤード……があるから、メロペは肉眼じゃ見えないけどね……」
繋いだ手が徐々に冷えていくのにも構わずに、空をこうして仰いで。
星を見ていると飽きない。でも、月子とこうして一緒に見ている方がもっともっと飽きない。
立ち疲れた俺は、近くの生垣に座って月子の手を引いた。
「どうしたの?」
「こっち来て?」
ポンポンと膝を叩きながらそのまま手を引いた。
「え、え?!翼君」
「いいから、……な?」
戸惑うその言葉に被せるように引き寄せると、しぶしぶと俺の膝に座り込んだ君。
恥ずかしそうに縮こまっちゃって可愛い。くすくすと笑いながら、俺は自分の上着を月子にも覆うように被せながら抱きついた。
「こうしてれば、……もっとあったかい」
「う、うん!」
年明けの真冬の夜は、俺が嫌いな寒さのはずなのに、ドキドキした心臓と一緒に身体がほかほかして温かくなった。
ぎゅっと抱きしめながら、また空を仰いで、星のひとつひとつを見定めるように見ていると、一際輝く星がちらついた。
「ぬあ!」
「あ、流れ星!」
月子とばあちゃんと一緒に居たい×3
三回なんて絶対に間に合わなくて言えないから、ちょっとずるしてみたけど。
俺の視界の、右から左に大きく流れていったその流れ星に、願い事する時間も少し余るぐらいだった。
「今の、すごかったね」
「うぬ!あんな大きい流れ星、初めて見たぞ」
見えなくなった夜空には、ほうき星の残像がくっきりと残って、それもまた綺麗だったけど。
「ぬぬ〜ん。寒いから、そろそろ家に入ろっか」
「……うん、まだ見ていたい気持ちもあるけど、段々冷えてきたしね」
名残惜しい気持ちがあるのは、星を見た後いつも感じる事。
でも、今日だけじゃない、きっと明日もあるから。そう言い聞かせて、俺は月子の手を引いて家の中へと入った。
おやすみなさい。
そう言って、部屋の電気を消すと、真っ暗闇の部屋は文字通り視界が黒一色になって、何も見えなくなった。
カーテンを開ければ、きっと月が見えているだろうけど、それも遮ってしまっていたら何も見えない。
さっき見た流れ星の残像を瞼にちらつかせながら、眠ろう……そう思っていたのに、どうしてか目が冴えて眠れない。
それは月子も同じようで、先ほどから寝返りを打っては、どうにか寝ようと試みているようだ。
「……月子、起きてる?」
起きてるって分かってて、そう聞いてみたのは、なんとなく。
「……うん、起きてるよ」
「眠れない?」
「翼君も」
「ぬ〜ん。寒くて寝られなそうなんだな」
「うん、私も」
手を擦り合わせてみても、温かくなるには程遠く、目は冴えていく一方だった。
大きく布団を剥いでそこから抜け出した俺は、月子の布団へ近寄った。
「ねえねえ」
「ん、何?翼君」
「一緒に寝てもいい?」
今まですぐに返してくれた返事も、そう聞くと押し黙ってしまった。
「月子と一緒に寝たら、たぶんぐっすり寝れると思うんだ……けど」
話していくにつれて、小さくなってく俺の声。そのあとに、くすくす笑った月子の声が聞こえた。
「……いいよ」
そう言って触れてきた君の手を取って、俺はその布団の中に入った。
手を繋いで寄り添って、互いの体温で温かくなって幸せな気分に浸る。
でも、今度はドキドキしすぎて眠れなくなった。
繋いだ手を緩めたり強めたり、そう繰り返して。落ち着かない気持ちをなだめてみても、駄目だった。
「うぬぬ……眠れない」
「まだ、寒いの?」
俺がそんな状態だから、月子は眠れないらしくて、気遣わしげな声が隣からした。
「うん、眠れない……」
「お風呂、もう一度入ってきたら、暖かくなって眠れるかも」
「ううん、……たぶんそれでも眠れないよ」
「……え」
「だからね、たぶん寝れる方法はこれだけ。……月子のぬくもり、もっと貰ってもいい?」
耳元でそう囁いて、繋いだ手を離した俺は君の手を伝ってくぼみのある鎖骨に触れた。そして次は、やわらかなふくらみのある胸へ。
ビクリと震わせて戸惑う君に近づいて、唇を押し付ける。寒さの所為で冷たい唇を緩く食んで何度も落ち着けると、月子は甘い息を洩らした。
「あ、だめっ……おばあちゃんに聞かれちゃう」
「平気……だよ、結構部屋も遠いし。ちゃんと扉も閉めてるから……」
「ふぅ……んっ、んっ」
感じてる。
その声だけで俺の心臓は熱くなり、君に触れる手が止まらなくなった。
寝巻きのボタンの隙間から素肌に触れると、思いのほか温かな肌にその温もりを分けてほしくなって。
一個、二個、三個とボタンを外していって、吸い付くような肌に直に触れていく。
「ぁ……ん、っ……あ」
柔らかな胸を揺らして、その先端にある突起にそっと触れると、小さく喘いで。
もっと聞きたくなった俺は、指の腹で押しつぶしたり引っかいたりつまんでみては、素直に反応を示す月子に喜んだ。
「かわいいっ」
そうやって、君を褒めてから胸の突起を探って唇をつけた。
「やぁ、ん……ふぅ…、あっあ」
今度は突起にしゃぶりついて、舐めて、吸い上げると、まるで、もっと。とせがむように俺の頭を抱きしめた。
片方の胸は俺の唇で、もう片方は手で。
何も塗ってないはずのその胸が、口を付けるたびに甘くなっていく。ねえ、なにかお菓子でも塗ってるの?
「んっあ、あっ…、んっんぅ!」
ジュブジュブと音を立てて吸ったり噛んだりしていると、君は小さく震えてくたりと力を抜いた。
「ぬ?……もしかして、イっちゃった?」
「……っ!」
胸だけで軽く果てた月子は、俺の問いに息を詰めた。ばさばさと枕元で聞こえた音は、きっと月子が首を振った音。
「ぬはは、嘘なんか付かなくてもいいのに」
全く可愛いなぁ。って言いながら、俺は君のお腹を伝って、足の付け根の間に手を這わせた。
「……ここ、すっごい濡れてる」
「やぁっ……ぅ」
そうやって指摘して、月子を言葉で恥ずかしがらせて、ショーツの上から割れ目をなぞった。
俺が言ったように、もうそこは月子の蜜で湿っていて、俺の事を待ってるみたいに腰が揺らめいていた。
そんなに誘ったら、どうなるか知らないぞ?
再び月子の唇に、キスをした俺は、ショーツを退かして自分の指を侵入させた。
溢れてくるぐらい潤った中は、俺を招き入れて食べようとしてる。
「なあ、なあ。痛いぐらい俺の指締め付けて、俺の事そんなに欲しい?」
「ぁっん、んっふぁあ、あっ」
ばらばらと中を弄って、揺らめかせて、その度に絡みつく君の熱い蜜に俺も溶けそう。
「あ、また締め付けた。……ねえ、その蜜、もっとちょうだい?」
グジュリと卑猥な音を立たせて、引き抜いた俺の指を最後まで名残惜しそうに含んで。
「月子、本当かわいいっ」
俺を求めてくれるのが嬉しくて、すぐに月子の両膝を抱えあげた俺は、入口に自分の熱を押し付けた。
溢れた蜜は俺の熱に触れて、さっきの指みたいに絡まってくる。
そこをキスされているような錯覚に耐えられず、俺は一気に月子の中に押し入った。
「ぁあ、んっ……つばさ、くんっ……あ!」
「すきだよ、つき、こっ」
物凄い締め付けに、一気に極みにいきそうになったのを何とか耐えて、やり過ごす。
またその刺激だけで、月子は軽くイっちゃったのか、身体をふるふると震わせて俺の背中に手を回して耐えていた。
「つばさく、ん……すき、すきっ」
その言葉をきっかけに、俺は月子を揺さぶって、自分の熱と月子のナカの熱が混ざり合うように行き来した。
「ぁああ、んっぁっア、んっあぁっ」
ひっきりなしに聞こえてくるその声、乱れた息。狂おしい程の幸せがここにある。
「やぁっ……おかしくっ、なっちゃッ……うっ…あっあぁ!」
「いいよ、もっとおかし、くなってっ。俺でっ、おかしくなって?」
「ぁ、んんっぁ、あっンっぁあ!」
その言葉があんまり可愛いから、月子が愛しいから、閉じ込めたくなる衝動に駆られる。
でも、そんなの何も解決しないんだ。
腕の中で抱きしめて、君の笑顔を見ているだけじゃ駄目なんだ。
ちゃんと大人になるから、見てて欲しい。
少し乱暴に揺すり、君の最奥へと俺の熱をぶつける。
「あぁっ、ンっああぁ!っああ、あぁんっ!」
「……っう」
俺をぎゅっと締め付けて、俺が抜け出すのを嫌がるみたいに抱きしめてた。
震えるそのナカに、俺は自分の熱を吐き出して、月子を抱き返していた。
何度も求め合った身体は、もう緩慢な動きしか出せないほど疲弊していた。
それでも、心は満たされ、あんなに冷え切っていた身体も指の先まで温かくなっていた。
冬は嫌いだった。寒いから。
でも、もう嫌いじゃないよ。こうして、君と温もりを分かち合えていけるから。
「月子……大好き、……大好きだよ」
眠りに付いた君の耳元でそう囁いて、重たい瞼を落とす。
夢でも君が出てきたらいいな。そう思いながら、意識を手放した。
夜明けに落ちる夢
2010/01/05
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