哀想/100sss | ナノ


ちゅっ、ちゅっ。と終わらないリップノイズ。
洗い立ての髪をドライヤーで乾かして貰っていたはずが、いつの間にかドライヤーは音をぱたりと止まり、床に横たわっていた。

乾いた髪は一房だけ、器用な長い指に絡められ、琉生さんの唇が落ち着けられた。
神経のないはずのそこが、カッと熱くなるような錯覚が起きる。
軽い接触だけで、わたしは気が動転してるのに、琉生さんは逆にリラックスしているように見える。
近づく吐息とともに髪を口づける距離は狭まり、耳朶に唇がふれると、わたしは大きく身体を震わせた。

「っ……琉生さん、もう」

思わず琉生さんの腕を掴み、『もうやめてください』と制止を呼びかけた。それにうん。と琉生さんは頷いてくれたから、てっきりわかってくれたと思ったのに。
わたしの唇を指でなでたあと、琉生さんはそこに口づけた。
軽く合わさるだけですぐ離れたそれを目で追い、さっきの比ではないくらいカッと熱くなった身体。

「ごめんね、ちぃちゃんかわいいから、つい」

再び唇同士が触れるか触れないかの距離で、囁かれる。
珍しい琉生さんの言い訳に耳を傾けようとしてるけど、またキスされちゃうんじゃないかと思うと、それどころではなくて。

「いじわるしちゃった」

少しだけ楽しそうに告げたのち、唇は何度も押しつけられた。マシュマロみたいな柔らかさのキスの嵐に、思考はどんどんとかされていく。


ちゅっ、ちゅっ。
二人して合わさった温かさに溶かされても、それはいつまでもやむことのない甘さ。





声を吸う
2013.01.18
(まよい庭火)

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