一章


土(・・・なんでこんなことに・・・)

ここは《雪桜》内のフロント
先ほど出会った「藤宮夏芽」と名乗る男に連れられ
(ほぼ強引に)店に誘われたのである

土「(・・・店の外見も内見もほぼ遊郭と一緒か・・・)おい何で店に入れて―――」
『土方何さん?下の名前教えて』
土「(あ・・・こいつ人の話聞かねぇタイプの奴だ)・・・十四郎」

自分の質問を遮られ、脳内認識しながらも一応問には答える
土方の返答に『十四郎か』と一人満足している夏芽
すると・・・


スパンッ――

激しい音と共に夏芽の寄りかかっていた襖が勢いよく開けられた

『うわっ!?』

当然夏芽は後ろに倒れ・・・ることはなかった


?「うおっ・・・と、やっと見つけた、どこ行ってたんだよ馬鹿夏芽、みんな待ってんだぞ」
『あぁ、ごめん、良』

後ろに倒れ込んだ夏芽を支える良と呼ばれた男は、そのまま夏芽の体に腕を回し土方を見る

良「・・・どちら様で・・・?」
土「しらばっくれんな、知ってんだろ藤宮良」

―――藤宮良
この男は幕府関係者の中ではかなり有名である
将軍の補佐役の大老であるにもかかわらず、
寝坊・居眠り・問題発言はあたりまえ、最もひどかったときは
国を動かすほどの大事な会議中に寝坊、居眠り、問題発言を全てやり遂げ、そして無断早退
それでもクビにならないのは、それだけ重要な人物なのだからだろう

良「嘘だよ、鬼の副長さん。前に何度か会ってるもんな
忘れねぇよ、その男前な顔」
土「あんた、なんでこんなとこにいるんだ、
・・・そういう趣味か?意外だな」

基本真面目な土方にとって、こういうだらけた人種はあまり好ましくない
よって、ついきつい口調になってしまう

『土方さん、そんな責め立てないであげてくださいよ
これでもここ(雪華経)のオーナーなんだから』




土「・・・・・・・・・・は?」




土方は予想外の言葉に間の抜けた声を出してしまう

良「いや、「は?」じゃなくてね?俺一応ここのトップなんですわ
だから・・・」

一度言葉を切り、口角をあげ、



良「こんなことも、できちゃうんだなぁ」
『うあっ!』

夏芽の服の中に手を忍ばせ、胸元を撫でる
いきなりの展開についていけず、固まる土方に、お構いなしで手を滑らせる良

『んっ、や、ちょっやめ・・・っ』

手は夏芽の抵抗も虚しく、どんどん下に降りていく

『はっ・・・、りょ・・・う』

首筋に口付ける良に、夏芽は必死にもがくが、当の本人は止めてくれない
・・・・と、


ばちっ


(あ・・・)

今まで硬直していた土方と目が合う

『ひ・・・ひぃかた、さん・・・たすけ・・・』
土「・・・!」

一瞬遅れ、自分への助けの声に気がつく

土「お、おいっ何やってんだ人前で!!」

やっと止めに入った土方に、

良「ん〜?可愛いでしょ?」

と、のんきに返すが手は止めない

『い、いい加減に・・・ふ、んんっ』
土「あーーっもうやめろって!!!」

二人でかかってもやめる気配は一向に感じられない
すると・・・


?「こんっの、浮気者ーーー!!!」


ドゴオォォォッッ

良「ウギャァァァッ!!」

激しい叫び声とともに、良が吹っ飛んだ


『・・・太一』


見るとそこには、息を荒くした男が立っていた







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