二章


数分前――




(うわぁ、人多いなぁ)





良に頼まれたお使いに来ていた夏芽は一人、駅のホームにいた
しかしそこには思わず「圧迫死するっ!」と言ってしまいそうなほどに人がいる
  



(しかも両手に荷物だよ・・・あ、誰かに見られてる、誰じゃお主)




もともと人ごみが好きではない夏芽は少しイライラしてきたのか変なノリになる




(まだ見てるよ・・・なんなんですか、俺普通の食材買っただけなんですけど、
欲しいの?ここに大好物でも入ってるんですか?・・・あげませんよ、おっさんには)



まだ顔も見ていないのに、勝手におっさんと決め付ける夏芽



そんなくだらないことを考えているうちに、電車が到着する
ドアが開くのを待ち、中に乗り込むと自分の後を追って乗客が次々と場所を埋めていく


すると夏芽の目に入ったのは、目の前に立つ気だるそうな目をした一人の男



(白髪・・・でも若い、24、5くらいか、染めたのかな)


また勝手に自己分析をしていると・・・









もぞ――・・・



ビクッ!



不意に感じた下半身への感触
思わず体を強ばらせる




(え・・・痴女!?・・・じゃない、手の大きさ的に男だ・・・ハッ!!
もしかしてさっきのおっさん(仮)かっ!これ目当てだったのか・・・!)



止めようとするも、両手には荷物がいっぱい
そもそもこの状況を周りの人に知られるとなると、男として情けない



『っ・・・!』



顔を歪ませ、出そうになる声を必死に耐える




――その時、カーブに入った車体が大きく揺れ・・・








ぼすっ




「っと・・・大丈夫か?」
『ん・・・あ、すみません』





どこにも捕まることができていなかったため、前の白髪の青年に倒れ込んでしまった
体制を立て直すことができずにいると



『んっ・・・ふっ、つ・・・(さっきよりも激しくなって――・・・!)』



何もできないで放っておくと、動きがどう考えても激しくなっている
倒れ込まれたままの青年も流石に異変に気づいたのか声をかける



「おい、兄ちゃんホントに大丈夫か?顔赤ぇぞ」
『ん・・・だいじょ、ぶです・・・はぁ・・・っ』





赤い顔に色っぽい伏し目がちな瞳
荒くなった息に時折苦しそうに歪ませる表情
その全てにこの青年は






「(可愛い・・・けど、やっぱ具合悪いんじゃ・・・)・・・あ」



たまたま目に入った夏芽の帯下
そこには明らかに誰か他の手があって・・・










「おい何やってんだ、そこのおっさん」









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