一章
――大広間IN雪桜
今この部屋には土方含め十数人の人が集まっていた
そのほとんどは勿論雪桜で働く男娼である
土「案外少ないんだな、巷じゃ有名な店なんだろ?」
夏芽と共に部屋に入った土方は、ざっと部屋の中を見渡す
『それだけ人選んでんですよ、だから顔、性格共に良しなんです
あと、有名っても名前だけで実際はみんな間違って色街とかに行ってるって』
土「分かりにくいんだよ、この場所」
土方が指摘すると、『そうですね』と笑顔で返す
すると、一人の男娼と思しき男が二人のもとに駆け寄ってきた
「夏芽さん、今日は俺に酌させてくださいね」
『ああ、よろしくな、翔(かける)』
夏芽は翔と呼ばれた男に先程と同様の笑顔を向ける
それに対し翔は元気よく頷きその場を離れた
土「やっぱ花魁は違うな、人望が」
土方がそう呟いた時、先程ボコボコにされ土方を冷やかしていた良が大きめの声を張り上げ、その場の人間に伝えた
良「えーっと、今日は俺たちの記念日なので、宴会をしたいと思いまーす!
諸君、しっかり褒め称えなさい!…はい拍手!!」
傍らには頬を染める太一がいるが、やはり嬉しそうで、わぁ、とその場が盛り上がり、おめでたい空気になると、みな一様にコップに飲み物を注ぎ始める
『土方さんはなにが良いですか?酒が苦手ならジュースも沢山ありますが…』
土「いや自分で…あー、いやビール貰えるか?」
『ビールですね』と微笑み二つのコップに注ぎ始める夏芽
その光景を黙って見守る土方だが、どこか違和感を覚える
『はい、お待たせしました』
その手に握られた、注ぎたてのビールの入ったコップ
その中身はというと…
ショワショワショワワワーン
コップ内の約三分の二が泡で満たされた元ビール
土「お前、注ぐのへたくそか」
『うるさい、飲めればいいんです』
プゥと頬を膨らませ、顔を赤らめれば
キュン
土「(っ!何だ今の…)飲めねぇだろ、それ」
自身に起きた違和感を気にしながらも、誤魔化す為に話を続ける
『そこはあれです、今まで育んできた愛で何とかなります』
土「んなもん育んだ覚えはねぇ」
『じゃあ気合いで』
土「だったらお前先に飲んで見ろ」
『…飲んでくれなきゃ泣いちゃうぞ』
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