眼鏡は邪魔だね06 | ナノ
あのレンズ越しに見える風景は、どんな感じなのかな?
生憎、私は昔から視力だけは良いので、眼鏡をかけたことがない。きっと彼がかけていなかったら、興味を持つことも無かったかもしれない。彼と同じもの、彼の見ている風景、感じていること、彼の気持ち。彼のことを、何だって知りたかった。


伊達眼鏡をかけてみた。(ふふ、何だか視界が狭い。)
そのまま、図書館で本を見る。別に変わりはないのだけれど、視界が狭くなったからか、いつもより集中して本が読めた。フレームの中に限定されている、視界と感覚。


「君、眼鏡かけてたっけ?」
視線を上げると、正面に彼が立っていた。いつもよりくっきり見える気がする。(気のせいなのだけれど。)

「いいえ、これ伊達なんです。」
「君がかけると、まるで文学少女みたいだね。場所が場所だし。」
「それって、褒めてます?」
「うん。すっごく似合ってる。」


いつも意地悪ばかり言うのに、そんな事を言われると照れてしまう。
「僕と、おそろいだね。」
「え?」
「大方、君の事だから、僕と同じようにしてみたかったんでしょ?」

"本当可愛いよね、君って。"
そう言った彼は、悪戯めいた顔をしていた。まるで、全てお見通しと言わんばかりに。

「でも、これは没収ね。」
「どうして?」
「だって、キスしたい時邪魔だろ?」

そう言って、眼鏡を外され口付けを落とされた。
音を立てて離れた唇は、弧を描いていた。


「ね?こっちの方が自然でしょ。」