愛しさに溺れる05 | ナノ
彼は優しく口づける。頬、唇、首筋に滑るように口付けを落としていく。それが、ちょっとくすぐったくて、身をよじった。


「こら。逃げないの。」

そう言って、手を重ねた。見上げる彼は、いつものように笑っている。それなのに彼を見ると、いつもよりドキドキする。決して息が出来ない程の口付けではないのに、うまく息が出来ない。まるで彼の唇が触れた所から、痺れていくみたいに熱い。それよりも、彼の唇の方が熱い。


「ほ、まれさん。」
「ん?」
「何だか、苦しい、です。」
「…うん。僕も胸が苦しい。」
「でも、嫌じゃないの。」
「よかった。僕と同じだね。」

二人目を合わせる。悲しくないのに、苦しい。
きっとこれが"愛おしい"ってことなのかもしれない。
私は無我夢中で彼に手を伸ばし、そっと目を閉じた。