二人は二人で | ナノ

パタパタと歩く音がする。たぶん、否きっと月子さんだ。
スッと襖が開く。ほら、やっぱり君だった。当たってちょっと嬉しい。
「あの、誉さん。お昼の用意が出来たんですけど…。」
「じゃあ、お昼にしようか。」
「でも、何かなさってたんじゃ。」
「いいよ。丁度キリも良いしね。」

そう言って立ち上がって彼女と廊下に出る。彼女のでは無いにおいがした。それに何だか嬉しそうに、呼びに来たから…。

「月子さん、今日のお昼は煮物?」
「え?どうして、分かったんですか?今日は凄くうまく出来たんですよ。」
「ふふ、そうなんだ。楽しみだなぁ。」

やっぱり。
だからあんなに嬉しそうにパタパタ歩いてきたんだね。最近は彼女の一挙一動で、思っている事がわかるようになってきた。まるで心が透けている様に。昔は分からなかったけど、一緒に暮らしていくうちに、段々とそうなってきた。


そういえばこの前月子さんも言っていた。
"最近誉さんが思ってそうな事が、言われなくてもなんとなく分かるんです。"
それを聞いて、何だかくすぐったかったのを思い出した。


「…あぁ、これが夫婦なのかもね。」
「誉さん?」
「何でもないよ。お腹空いたね。」

とりあえず、奥さんが上手に出来たという煮物を食べながら、話でもしようか。