君が見失わないように(一月) | ナノ
Happy birthday Kazuki!
薄っすら視えたのは、大きなウェディングケーキと白のタキシード。颯斗、翼、桜士郎に誉…。そして隣には…。


瞼を開けると、それは真っ白な…書類の山。そうだ、颯斗によって積み上げられた書類の山を片付けている途中だった。書類で見えないが、紙をめくる音とペンを走らせる音、あと翼の意味不明な歌が聞こえる。皆生徒会室にいるようだ。


「会長、手を動かして下さい。いつまでたっても終わりませんよ?」
「あぁ。てか颯斗、お前は鬼かっ!!こんなに積み上げ…」
「サボってばかりいる会長が悪い。」
「ぬー…。俺もう疲れたー。」
「翼君は、先ほどから全然進んでいないじゃないですか。」


ハァ、とため息が聞こえた。ヤバイ、このパターンは颯斗が…。

「わ、私お茶入れようか?皆疲れてるだろうし。」

ナイス!月子!

「…そうですね。お願いしてもいいですか?」
「書記ぃー、俺も!」



机の端に湯呑が置かれた。俺の分も入れてくれたようだ。
「お、サンキュ。」
「いいえ。一樹会長もあんまり根詰めすぎないでくださいね。」
「大丈夫だって。ありがとうな。」


そう言って顔をあげると、彼女が微笑んでいた。
あ、そうか…。隣にいたのは…。純白の衣装を着て、今より少し大人になった月子が、照れたように微笑んでいたんだ。

「…どうしたんですか、一樹会長?」
「いや、ちょっと、な。」

「あー!ぬいぬいズルイぞーっ。俺も書記とお話するー。」

「会長、翼君。2人とも仕事をしてください。」
「よ、よし。もうひと頑張りするか!!」


未来にあるのは、別れだけじゃない。続いていく関係もある。あの日視たものを現実にするためにも、精一杯前に進もうじゃないか。月子よりも先を行っていられるように。