従順で聡明:utpr | ナノ
“食べちゃいたい”

それはただの揶揄じゃなかった。本当に頭のてっぺんから爪先まで、がぶりと食べられてしまった。やめて、止めて、とあれだけ懇願したのに、“嫌がられると、余計に燃えるよね”と一蹴されてしまった。


「…ねぇ、まだ怒ってるの?」
隣にいる彼は、苦笑いをしているが上機嫌。よしよし、と私の頭を撫でる。それに何だか腹が立って、シーツで顔を隠した。

「林檎さんの、せいです。」
「ふふ、うん。そうだね。」

ごめんごめん、とシーツ越しに私のおでこにキスをした。
…そんなんじゃ、許してあげません。誰のせいで、こんなに身体が辛いとおもってるんですかっ。

「でも春歌だってあんなに、よがっt」
「きゃあぁぁ!」

慌ててシーツから顔を出して、彼の口を押さえた。そんなこと声に出して言われたら堪ったもんじゃない。それを良い事に、口を押さえた両掌を、ぺろりと舐められた。その感触に肌が、びくりと反応する。

「ほんと、可愛いなぁ。もしかして、思いだしちゃった?」
「!!」

赤くなって、かーわい。なんて仕事の月宮林檎の声で言う。この使い分けが、またズルイ。

「ハールちゃん。ぎゅーってしてあげる。」

(…そんな可愛い声で言ったって、許してあげないんですから!)