暮れる夕暮れ11 | ナノ
Happy Birth Day Ryunosuke!
「わっ、冷たい。」
最近はようやく気温も下がり、冬らしくなってきた。日中日が当っているとまだまだ暖かいが、風はもう冷たい。時折吹く木枯らしに、あいつは眉をひそめた。
「もう、冬だね。風が冷たい。」
「ああ、そうだな。季節の変わり目だから、風邪には気をつけろよ。」
「ふふ。はーい、宮地部長。」
そう笑った夜久の髪は、風に吹かれて乱れていた。直してやろうと手を伸ばす。
「…宮地君?」
「髪、ぐしゃぐしゃだぞ。」
「え!やだ、さっきの。」
「まってろ、直してやるから。」
そっと触れた髪が、あまりにも柔らかくて少し驚く。するすると指通りの良い髪は、柄にもなくもう少し触っていたい、と思った。そんな気持ちを押し込め、手を離す。
「お、終わったぞ。」
「あ、ありがとう。」
お互い、この距離をどうしたらいいか、分かっていない。
ただ言える事は、今の俺には髪に触れる事が精一杯だということ。それに反して、もっと近づきたいと気持ちが急かすことだ。
「み、宮地君?どうかした?」
「いや、…帰ろう。」
もう日が暮れるのが早い。
だんだん寒くなってきたからか、妙に人恋しい。
それが夜久にだけ触れたくなるのだから、厄介だ。
赤く暮れゆく太陽を見て、“綺麗だね”と呟く夜久に、俺は、あぁ、としか答えられなかった。
夕日にくれる、恋しさ
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