各地で音楽活動行なう彼は、出張が長期になる事が多い。今回も3ヶ月間だという。よくある事なのだけれど、出発当日はやっぱり寂しい。

「それでは行ってきます。僕がいない間、留守を宜しくお願いします。」
「うん。こっちの公演は私も行くから、楽しみにしてるね。」

確かこちらの公演は1ヶ月後。その1度会える事が、また淋しさを助長する。


「月子さん。…淋しい思いをさせてしまって、すみません。」
「そんなこと、私こそ毎回っ」
「…けれど、本当は貴方が淋しいと思ってくれる事が、嬉しいんです。」

不謹慎ですよね、と苦笑いする。
その顔が堪らなく胸が苦しくさせる。そんな事当り前じゃないか。

「じゃあ、行く前に抱きついて、良い?」
「…ええ、どうぞ。」

そう言って両手を広げた彼を、思い切り抱きしめた。

「昨日あれだけ一緒にいたのに、全然足りませんね。」
「え?」
「…残念ですが、もう1度ベットに戻る時間は、無いようですね。」
「は、颯斗くん!」
「ふふ、冗談です。…それでは行ってきます。」

「…もう。行ってらっしゃい。」

恒例になった、行ってらっしゃいのキスをして、彼を見送った。
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